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腰椎圧迫骨折

疾患別の説明

腰椎圧迫骨折

【疾患】

骨粗鬆症の影響により骨が弱くなり、脊柱の椎体(椎骨の頭からの体重を支える部分)の骨折として発症します。第11〜12胸椎と第1腰椎の胸腰椎移行部に多発します。若年者ではスポーツ事故や転落事故により発症することが多いです。

楕円形の椎体が潰れた状態ですが手術を行うことは少なく、長期ベッド上臥床での保存療法で骨癒合を待ちます。コルセットなどを使用しますが3ヶ月程度(個人差あり)で除去すると思います。

椎体が潰れた状態で骨癒合を待ちますので、基本的に潰れた椎体が元の形に戻ることはありません。予後は良好です。

【評価と経過】

基本的に長期臥床により椎体の骨癒合を待つので骨癒合までは安静が大切です。入院初期は腰部の骨折による痛みを強く訴える方が多いのですが、長期臥床による運動不足や睡眠が不規則(昼夜逆転)になり、背筋群の凝りや痛みの訴えも多くなってきます。

圧迫骨折部の炎症を基点としたスパズムが腰部周囲筋を中心に背筋群でも発生します。リハビリが開始されると、徐々に貧血(長期臥床による起立性低血圧)に注意しながら起立訓練や歩行訓練とリハビリが進むと思います。この時期は運動量増加に伴う疲労性の筋肉痛とスパズムの軽減を軽いマッサージ(骨に影響ないよう)を行うことで痛み軽減が図れます。しかし、気持ちいいでしょうがマッサージはほどほどに!

椎体が潰れた状態ですので、潰れた椎体の影響により神経根を圧迫する場合が時々あります。神経圧迫されると下肢に放散する痛み・痺れがみられ、ヘルニアに似た状況だとご理解いただければと思います。腰部周囲筋の効果改善は重要で、神経症状の出ている人は出来るだけ下肢の筋萎縮・筋短縮が出難いように自己管理を続けることが重要となるでしょう。

【症例Aさん】 70歳代 男性

交通事故にて自転車より転倒し腰椎圧迫骨折で入院。ベッドサイドよりリハビリ開始となる。ベッドサイドでは寝返り動作で疼痛増強し、背中全体の痛みも訴える。保存療法(手術をしない)で経過。

「寝ている時間が長いのでキツイですね。寝返りすると腰が痛みますが、動かない時にも背中もあちこち痛みがあります。夜も眠れないことが多いですね。歩けるようになるでしょうか?」

ベッドサイドでの最初のリハビリではこのような訴えがありました。この方は、長期臥床(約1ヶ月)により全身の筋力・持久力低下がみられました。理学療法の教科書での流れから言えば、上肢・下肢を動かし筋力強化が重要視されます。私の場合は、まず痛みの軽減を第一目的に評価を行います。

患者様の訴えの中で、安静時の背中の痛みというのは寝返り動作の痛みとは違い、骨折部の炎症による痛みではなく背中の筋肉への長期圧迫・骨折部炎症による反射亢進・臥床による運動量低下による全身の循環不全、これらの影響による筋スパズムが発生していると判断しました。

このような筋スパズムの痛みと圧迫骨折部の痛みは質が違います。寝返り動作などで瞬間的に感じる痛みは骨折部への負担による痛みですが、安静時に鈍く背中全体的に感じる痛みはスパズムによるので、余計な痛みは出来るだけ軽減したいですから脊柱起立筋群の軽いマッサージで筋弛緩を行うことが必要です。

脊柱起立筋群を中心に初回では軽い触・圧迫刺激を加えて行き筋弛緩反応を出すようにし、数日間実施すると、安静時の痛みはかなり軽減することができました。

臥床期間をより短期間にするため、保存療法では個人の身体に合わせてコルセットを作成します。コルセット着用後の離床では、長期臥床により起立性低血圧の恐れもあるので、座位訓練・起立訓練を経て、理学療法室でのリハビリに移行しました。

理学療法室でのリハビリが始まると平行棒内での歩行訓練を開始し、下肢の筋力・持久力向上を待ちます。体を捻る動作で痛みが出やすいので、寝返り・起き上がり・立ち上がりなどの腰を捻る動作や腰に瞬間的に強い負荷がかかる動作(くしゃみなどでも)で腰痛が増すことを患者様に説明し、その瞬間的な強い痛みにより再度骨折することは無いという事実を伝え不安・恐怖を軽減することに注意を払います。

腰椎圧迫骨折ではコルセットをつけて(個人差あり2〜3ヶ月)生活しますので、コルセットがあたる部位などに軽い圧迫痛があり、普段から気になる方もいらっしゃるようです。この痛みはタオルなどをあてて我慢していただくしかありませんが、時々コルセットが明らかに合っていないこともあるようですね・・・?

現在は、骨癒合に合わせて出来るだけ早期にコルセットをはずすように指導されるのですが、骨折から1〜2ヶ月では体を捻る動作や歩行では腰痛が伴うために、コルセットをはずすのを怖がりコルセット除去が遅れることがあります。

理学療法開始後2ヶ月後に歩行も安定し体を捻る動作の痛みも軽減していました。Drより骨癒合も問題ないため退院が決定し、外来リハビリへ移行しました。

この時点で痛みはかなり軽減しており問題解決のように考えられますが、ここからが重要です。腰椎圧迫骨折の患者様は腰の痛みが軽減していますが、その身体動作を観察すると腰の動きをかなり抑制してごまかして動かしています。無意識の中で動きを抑制(恐怖・不安)している人が多く、これは圧迫骨折に限らずに他の骨折や外傷などで強い痛みを経験された患者様によくみられることです。心理面の影響で動作は大きく変わる!

Aさんの場合は床の物を拾う動作や、しゃがみこむ時、起き上がり動作などで腰の動きを抑制して他の身体部位でごまかしているという状態です。動作時に腰に力が入り、腰周囲筋の緊張を高めて安定性を向上させて、ロボットのようなぎこちない動きという感じです。

この心理的な抑制を解除するのが理学療法士の大切な仕事で、決して鍛えて筋力・持久力が増強したから、口でそれを何度も説明したからといって改善できない部分であり、教科書には無い専門性が問われる難しいところです。

Aさんには腰をあまり意識しない運動を導入し、体幹部を中心とした運動を誘導しました。腰部周囲筋の柔軟性低下もロボット動きの原因の一つでもあるので、身体面からのアプローチを中心に行い、動きに対する恐怖感を徐々に解除していきます。

関節の動きは小さな動きから大きな動きへと徐々に拡大していくのですが、この時は力が入り過ぎないように気をつけて、収縮・弛緩の切り替えしを特に滑らかに行うよう運動時の動作を行うのがポイントです。

小さな動作からスタートし日常生活で実施する動作(骨折前に楽に行えていた動作)に近づけていきました。これにより可能な範囲の滑らかな可動性の大きい動作が可能になってきました。患者様が気付いたら「楽に動かせている」というように感じられる誘導がよい結果を生むようです。

Aさんには退院後1年くらいはリハビリと考えるように説明しています。痛みや動きがだいぶ楽になっても、圧迫骨折部位周囲の筋の柔軟性と本人の日常でのいろんな動作を抑制しない試みが続いてこそ、より高いレベルの改善が図れると考えるからです。

※腰椎圧迫骨折では骨粗鬆症があり転倒で発症する高齢の患者様が多いのですが、最近は若い方のスポーツでの圧迫骨折もよく見かけることがあります。

退院後も慢性の腰痛として感じる方は、腰周囲筋の柔軟性低下(筋硬化)が残ったままの方が多いようです。腰周囲筋への筋弛緩(マッサージへ行っても原因の筋へ的確に対応できないと意味がないです)を図りストレッチなども合わせて行ってください。

若い方では運動やストレッチによる再骨折はあり得ませんので、どんどん体を動かしてみてください。

【慢性痛対策】

圧迫骨折はコルセットを着用すると意外に早期より病院内を自由に動き回ることが可能です。入院1ヵ月を過ぎると病院内での動きがかなり増加しているのですが、寝返り・起き上がり・立ち上がりなどの動作(体を反ったり捻ったりした時)を行った時に瞬間的に感じる腰痛が目立ちます。また、立ちっぱなし・長距離歩行などの持続する同じ姿勢や繰り返される同じ動作では腰部が次第に重く感じて、じわじわと増す鈍い痛みを感じている人も多いと思います。

多くの人が発症後から1〜2ヵ月くらいで運動量(病院内での移動など)は増加しているのに、動作時痛と持続的な姿勢で感じる2つの痛みを生活内ではたびたび感じるので不安が増す時期でもあるようです。本人は動きが増しているのですから体力は向上してきている「治っている」という実感が強くあるでしょう。動きは良くなっているのに生活内では毎日痛みを感じるので「痛みはこのまま治らないのでは?痛みが続いているということは骨がまだ固まっていないのでは?」などと悩まれることがあるようです。

焦ってはいけません!発症から1〜2ヵ月は痛みがあって当然なのですから。
腰椎圧迫骨折の場合は生活内での活動量(体力向上)が先行し向上していくので、動作に比べて痛みはゆっくり軽減していくことが多いようです。圧迫骨折直後から2週間ほどはベッド上でちょっと寝返りしても痛かった時期が皆さんあったと思います。骨折直後の痛みの出方からすると発症から1〜2ヵ月が経過していると、この時間経過とともに痛みの強さは確実に発症時に比べると軽減していますよね?軽減していないなら骨折直後と同じ動作で痛みが出ているため起き上がりは出来ないでしょうし、寝たきりのはずです。

冷静に今現在感じている痛みと前に感じていた痛みを比較して見つめ直すことは大切なことです。圧迫骨折後2ヵ月ほど経っても痛みが気になっている人でも確実に週単位で振り返ると少しずつ痛みは軽減してきているはずです。

腰椎圧迫骨折の発症から3ヵ月ほどは動作時には多少の痛みは感じますが、誰しもスピードの差はありますが痛みは軽減してはいくものです。早い時期から動作時に痛みをあまり感じていない人は腰を固めた代償動作で腰の負担をごまかした動きを行っている人が多いようですね。腰に負担の加わらない動きをしているから痛みが出ることが少ないだけで、腰が治ったから痛みが出ていないのとは違うのです。

発症前のように床の物を拾う時や歩行や起き上がりなどで、腰への意識が向きすぎており精神的な動作抑制(腰を曲げたり反ったりすることが怖い)が入り過剰な力が腰に入った状態で動いているということです。例として床の物を拾うのに骨折前は腰を曲げて取っていたのに、骨折後は腰をほとんど曲げずに膝を曲げてしゃがみ込んで取るなどの代償動作が目立ちます。腰を使用していないから負担が加わらずに痛みが無いのですね。

痛みを感じるような動作を行う時は無意識にこの様な代償動作によりごまかせているのですが、これはあくまでも病院内での少ない運動量でよい時期では通用しますが、自宅での骨折前の生活と同じ運動量を必用とする段階に入ると通用しません。だから退院して自宅生活が続くと痛みが増したり、職場復帰した時に腰痛が増す人なども多いのです。

病院のリハビリも終了して病院内での動きでは痛みが無かったのに、退院し自宅に帰ると痛みが増してしばらく痛みが続くと、今まで「治っていた」と思っていたのに、「また悪くなった」「もうこの先ずっと痛みが治らない」と思い込んで落ち込む人は高齢者などでは意外に多くいらっしゃいます。高齢者では動くと痛みが増すからと考え家から出ない生活を続けたりする人もいます。家族も「痛いなら無理しないで横になっていたら」と間違って気をつかい安静を薦めると、家族の間違った支援と本人の間違った落ち込みが合わさった結果、患者さんが守りの姿勢に入り悪循環がスタートします。

痛い→動かない→腰部の持久力低下→たまに動くと痛みが出やすくなる→痛い→動かない
完全に悪循環に入り込んでいくのですね。退院後などの痛み増強は体力的な不足の影響が強いので、痛いけど可能な範囲動き続けなければいけない時期なのです。そうしないと安定的な日々の痛み軽減には繋がりません。

精神的抑制が解除され過剰な緊張が無い滑らかな動作ができていて腰の痛みが増さないというのがゴールですから、これは骨折後から半年〜1年くらいは継続的に運動などを行っていかないとなかなか身につかないものだと思います。良い動きが出来ていて痛みが無いというのがリハビリ終了の条件だと考えてください。

自分が感じている痛みだけを頼りに本人の勝手な思い込みで「治った・治っていない」を判断することはおかしな事ですね。

発症から3ヵ月ほどが経過しても、生活内での痛みが無くても実は精神的な抑制による過緊張状態での動きを続けているから腰痛が無いだけかも知れませんから?

腰を固めた動きで痛みが出ていなとしても、普段よりちょっと歩く量が多かったり、家の片付けなどをして普段より立ったり座ったりが多くなると腰痛が出やすいということは予想できると思います。

圧迫骨折から2ヵ月程度で生活内での痛みを感じていない人、3ヶ月を過ぎても痛みを感じている人、どちらが単純に悪いとは言えないと私は思います。

あくまでも動きと痛みを比較して評価することが大切ですし、皆さん自身は動きが先に良くなっていくので骨折後から2〜3ヵ月の経過途中では、生活内での動作や持続姿勢での腰痛増強はある意味当然であり無用な間違った恐怖・不安を抱かないようにしてください。

痛みがあろうが無かろうが!最低半年〜1年は運動継続が必用であり大切です。
退院後も腰の柔軟性を意識しながらストレッチや柔軟体操、散歩などでの歩行訓練(腰部の持久力強化)をどんどん実施してください。

  1. 骨折後から1〜2ヵ月の経過時期は動作の改善や運動量の増加に比べて、痛みの軽減がゆっくり進むので痛みが気になり安い。
  2. 退院後は病院内の動作では腰部への負担が少ないので見かけ上は痛みがすごく軽減していたのですが、腰部の柔軟性・持久力は不足しているので、退院や職場復帰で腰部への負担が増強すると腰部の疲労が増して痛みが増す。このため痛みが気になる。

この2つの時期は痛みが特に気になりやすいので、皆さん焦らないことが大切ですね。


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