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臼蓋形成不全

疾患別の説明

臼蓋形成不全

※臼蓋形成不全で診断を受ける人は30〜40歳くらいの女性に多くみられます。変形性股関節症に進む前の段階で、将来的な変形の進行は個人差があり断定的な予測は不可能な疾患です。
  いろんな誤解も多く、リハビリとしての取り組みも間違っている方も多いようで、今回は臼蓋形成不全についての問合せも多いので症例を作成しました。

症例Aさん(女性:30〜40歳)

仕事中などの中腰姿勢で腰痛が気になるようになり1年前に病院受診。診断で股関節の臼蓋形成不全との診断あり。保存療法希望にて理学療法を実施、症状の好転なく疼元庠舎へご来店されました。

岸川:

腰痛の方はどの様な痛みですか?仕事中で痛みを感じやすい時間帯や姿勢はありますか?

Aさん:

仕事をしている時に中腰が続くと痛いです。どんな痛みとは言い難いのですが、腰の辺りの筋肉がカチカチに硬くなる感じがあります。仕事はデスクワークが多いのですが、資料を取りに行った時や立っている時間が長い時などに腰の痛みと股関節の鈍い痛みと突っ張る感じが増してきます。

岸川:

半年ほど経過していますが、痛みが気になり始めたのはいつ頃ですか?今も痛みは
強くなっていますか?

Aさん:

1年くらい前から少し腰が気になるようになりました。だんだん腰の痛みが強くなってきて足も重だるさなども増してきたので半年前に整形外科を受診しました。痛みは半年前と比べてもあまり強くはなっていませんが、良くもなっていません。

岸川:

臼蓋形成不全の診断が出ているということですが、Drからはどの様な説明を受けら
れたのですか?またリハビリはどの様なことをされてきたのですか?

Aさん:

臼蓋形成不全では股関節の変形が進むと変形性股関節症に進行するので、将来的に手術が必要になることがあるということでした。私の場合は軽い変形が若干ある程度(変形初期)なので、まだ手術は必要ないでしょうということでした。痛みの原因は股関節の周りの筋肉が弱くなっているというのが原因しているので、リハビリで股関節の周りの筋肉を鍛えてくださいということでした。股関節への負担を減らすためになるべく長い距離を歩かない・スポーツをしない様に言われました。

岸川:

リハビリは?

Aさん:

理学療法士さんが骨盤を動かしたり、股関節をマッサージしてくれたり、ゴムを使って股関節を鍛えたり器械(トレーニングマシーン)を使用した運動を行っていました。自宅ではストレッチをするように言われたので続けています。

岸川:

結果的には痛みの軽減が出来ずに駄目だったのですね?何が問題だと考えています
か?

Aさん:

臼蓋形成不全で股関節がやはり不完全に出来ているので、骨が影響しているからいくらリハビリをして筋肉を鍛えても痛みは治まらないのではないか?と思っています。カイロとか鍼とかも少し行ってみましたが・・・効果が無いのに週に何度も来て下さいと言われて正直信用できませんでした。

岸川:

疼元庠舎に何を希望されますか?

Aさん:

リハビリをしていた時に病院で知り合った〇〇さんがこちらに通われていて、2週間に1回程度の間隔でもかなり調子が良くなったよと言われていました。岸川さんとお話しして今後の取り組みとかを相談してみたら?と勧められました。遠方になるけど時々なら通えるかな?と思って来てみたのですが・・・
腰の痛みと足の重い感じというか突っ張る感じというか?これらが軽くなると仕事も楽に出来ますし嬉しいですね。

岸川:

そうですか、まず一番の問題として腰痛の軽減と股関節の突っ張り感の軽減ですね。
症状安定による仕事遂行の容易さを目指していきましょう。

岸川:

前の病院でDrや理学療法士(PT)に指導されたことで、Aさんが生活内で注意し
ていることを教えてください。

Aさん:

股関節に負担を掛けないようにしていくということが大切という話しでしたので、普段からなるべく床にしゃがみ込まない、重たい荷物などを持って歩かない様に気をつけています。なるべく駅などの階段の昇り降りは止め、長い距離を歩かない様にしていますね。スポーツジムでエアロビやランニングなどをしていましたがそれも止めました。

岸川:

自宅ではどんな取り組みをされていますか?

Aさん:

リハビリに行っていた時に自宅で行うように言われたストレッチを毎日20分ほどやっています。あと、セラバンドを使用した股関節の筋肉を鍛える運動と巻きつけられる重りを購入して足につけて上げ下げする運動などを行っています。別に効果が出ている感じはありませんが、股関節の周りの筋肉を鍛えないと変形が早まると嫌なので続けています。

岸川:

今感じている不安などはありませんか?

Aさん:

腰痛と股関節の軽い痛みで受診して、臼蓋形成不全という結果がでて驚きましたしすごくショックでした。股関節が段々壊れていく病気で、この先歩けなくなるのではないかと心配です。手術はしたくありませんし・・・・
病院で言われたことも行っていますが痛みは軽くならないですし、痛みが続いているから股関節が壊れて変形が進んでいるのではないかと不安です。
この先も腰や股関節の痛みが続き痛みは段々強くなるのではないかと考えると怖いです。
子供が大きくなるにつれて、いろんな所に旅行や遊びに連れて行ってあげたいのですが、長い距離を歩くと股関節への負担が大きく股関節が悪くなるので、あまり歩けないので遠くにはいけないでしょうね。本当に子供にはこんな病気になって悪いなと思っています。

岸川:

そうですね、いろんな不安や疑問から今後の取り組みの方向性まで不明瞭なことが
多いですよね。これらを一つ一つ整理して一緒に考えていきましょう。疼元庠舎がA
さんの股関節の変形を治すことは100%出来ません。しかし、今後は何が大切であるかをお伝えし、Aさんの身体能力からは何が可能か、変化を出せる部分があるのか?を冷静に評価し一緒に考え取り組んでいくことはできます。
今の状態を良い方向に変化させるためにはAさん自身がリハについて学ばれること
と適切な取り組みを継続されることが主役でなくてはいけません。
決して言われたことを鵜呑みにするのではなく、Aさん自身が症状や取り組みについてしっかり考えていかなければいけないということです。
そんなお店ですがよろしいですか?

Aさん:

はい、いろいろ分からないことが多いので、教えてもらいながら頑張ってみようと思います。


初回の会話の中でもいろんな情報が得られます。Aさんの症状や考え方から、私とAさん
の認知を外在化しなくてはいけないと考えます。いくつかのポイントをあげてみましょう。

※認知の外在化については、Aさんと岸川が一つの物事を説明する場合に同じ認識内容での
説明が出来るという状態(共通した認識)をイメージしてください。

  1. 臼蓋形成不全の今後の変化予測
  2. 痛みと臼蓋形成不全の関係
  3. 不安と痛みとの関係
  4. 臼蓋形成不全へのリハビリテーション
  5. 臼蓋形成不全とQOL

大まかにですが、最低でも5つのポイントはしっかりAさんと話し合っていかなくてはいけない内容だと考えました。

(1)臼蓋形成不全の今後の変化予測。

整形外科の外来などでは臼蓋形成不全はよく見る診断です。Aさんのように30〜40歳代の女性によくみられる診断で、Aさんの様に多くの人では股関節が悪いというよりも腰痛の問題として受診される方が多い印象があります。
レントゲンを取ってみると、画像的には臼蓋形成不全がみつかるということですね。
Drからの説明としては、臼蓋形成不全では個人差がありますが進行し変形性股関節症になるという説明がなされます。
手術を行うか?保存療法でいくか?の選択が求められますね。手術の選択をする場合も、出来ればセカンドオピニオンをしっかり行い他の病院に勤務するDrの見解も聞いてから選択されることをお勧めします。
今時一人のDrの意見を鵜呑みにしていてはいけません。

臼蓋形成不全を基本的に考えて見ましょう。原因はいくつか考えられていますが、要するに幼少期からの股関節の臼蓋が上手く出来ていなくて浅い状態ということですよね?
骨の成長が終了する高校生くらいの15〜18歳頃に臼蓋は最終的な形が完成しているでしょう。Aさんの様に30歳前後で腰痛や股関節の痛みなどで受診される人は、それまで股関節が臼蓋形成不全などになっているとは何も知らないのですから、受診してレントゲンを取ってみると変形があるということでビックリされるわけです。
Drからの説明で将来的には変形性股関節症になっていくという説明を聴くと不安と恐怖でいっぱいになるはずです。
そこで気になるのは変形の進行していく速度ですが、Drからの説明を受けて真剣に考える人は真面目な性格も合わさるようで、不安などの影響もあり変形がどんどん進行して行き10年もすれば歩けなくなるのではないか?という様にかなり悪い状態を漠然とイメージされている方々も多い気がします。
不安が皆さんの思考をマイナスの方向へと自然に考えさせるのですね。
しかし、多くの人は30歳前後で初めて受診し股関節の臼蓋形成不全がレントゲンでみつかりますが、臼蓋形成不全かもしくは臼蓋形成不全で初期の軽い変形が見られるというレベルの方がほとんどだと思います。
骨の成長は個人差がありますが15〜18歳頃に終了し股関節の状態も決定されています。この15〜18歳頃はすでに臼蓋形成不全のはずですから、この年から初めて診断を受けた皆さんの年齢(30前後?)まで何年が経過しているか?はポイントでしょうね。
多くの人では10年は経過しているでしょうから?皆さんは変形の進行が早いか遅いか?どう考えられますか?

極端に言うと臼蓋形成不全のみの診断なら15〜18歳の頃からたいして変化していないとも考えられますし、また、初期の変形が見られる場合でも?15〜18歳頃にすでに軽い変形した状態で骨成長が終了していたとも考えられなくはないですよね?
そう考えると軽い変形初期の状態であれば裏を返すとあまり進行していないのでは?とも考えられるのですね。
臼蓋の変形進行スピードは正直レントゲンを継続的に取って、その変化を比べていくことでしか判断できないのですね。だから、皆さんが腰や股関節に痛みや違和感が続いて病院受診をした初診でのレントゲン画像だけでは、変形が軽いほど今後の変形速度の予測などは困難ということです。
まず、数年は様子をみてみないと変形の速度は分からないでしょうね。
30歳前後で臼蓋形成不全、臼蓋形成不全からの軽い初期変形くらいの人ではあまり変形進行を早くイメージすることは無いと思いますよ。
だって10年たってジワジワ進行してきて?今の臼蓋形成不全か初期の軽い変形なのですから・・・あまり早くないと思いますが。
多くの方は約10年ほどの経過で今現在の状態までの進行イメージと今後10年・20年かけての進行イメージは、今後10年・20年はスピードがどんどん増して坂を転がり落ちる様な速さでの進行をイメージされている人が多いですね。
自分では冷静なつもりでも、不安や恐怖は間違いなく皆さんのイメージをマイナス思考にしていますよ。実際には一般的に30歳前後で臼蓋形成不全か初期の軽い変形が見つかる人で急激に変形が進行する人はほとんどいませんから。
まず、股関節の変形がどんどん進むという漠然とした根拠の無いマイナス思考のイメージを冷静に見つめ直してください。きっと過剰にマイナスに捉えていることがあると思いますよ。

(2)痛みと臼蓋形成不全の関係

臼蓋形成不全の診断を受ける人は30歳前後の女性に多いというお話をしました。多くの方が腰痛や股関節の違和感が気になるようになり受診されますね。
受診前の痛みに関する認識はどうでしょう?多くの方が腰痛や股関節の痛みを感じ始めて「腰が痛いな」「股関節が痛いな」という感覚で過ごされていたでしょう。数日前から痛みが出てきたから痛みの出現した時から悪くなったという認識ではないでしょうか?
受診前ですから、皆さんは痛みを感じ始めた日の当日やその前日などに痛みを出現させるような原因があったかな?と考えられたはずです。

例えば・・・

  • いつもしない運動量のスポーツや仕事を急に行い痛めたかな?
  • 何か重たいものを抱えて腰や股関節に負担をかけ痛めたかな?
  • 気づかないうちに腰や股関節あたりを捻って痛めたかな?

などと考えられたのではないですしょうか?たぶん痛みが2〜3日で治まれば筋肉痛かな?と考えるのでしょうが、痛みがしばらく持続すると不安が増して痛めたかな?と考えられる人は多いでしょうね。
この段階では痛みの原因は腰や股関節の筋肉や靭帯を少し損傷したのかな?というようなイメージです。

いよいよ痛みが軽減せずに持続し不安が増すと病院を受診されるのですが、レントゲンの画像より臼蓋形成不全の診断がだされるわけですね。
すると、股関節の臼蓋が浅くて奇麗に出来ていないから、変形が少し生じているから、骨の構造的な変形の問題が原因(骨が痛みを出している)して痛みが出始めた(痛みを感じ始めた日を境に悪くなった)と考えられるはずです。

この2つの考えを合わせて痛みの原因を考える結果、臼蓋形成不全による股関節の変形があり股関節はすでに悪い状態であり、痛みの出た日に何かの切っ掛けで股関節をさらに傷めたのだろう?だから痛みが続いている。
こういう様に今感じている痛みの原因を骨の変形(骨が変形しているから骨が痛みを出している)に結び付けて考える人が多いと思います。

臼蓋形成不全の診断を受けた人は痛みの原因を股関節の構造の問題(臼蓋の変形)に中心を置かれているのですね。変形が進むと痛みがどんどん増していく、今はまだ変形も小さいのにこの強さの痛みがあるのだから、数年後には痛みはどんどん強くなっていくのでは?痛みが増して数年後には歩けなくなるのでは?という不安によるマイナス思考が強くなっている方は多いですよね。

これは大きな誤解なのですね。何が誤解なのか皆さん自身は説明できますか?

臼蓋形成不全と痛みとの関係を考えるには、まず最低限度の股関節の構造と痛みの基礎は知る必要があります。
股関節の臼蓋が浅い状態、軽度の変形がみられる状態だと臼蓋形成不全では説明されると思います。骨盤の臼蓋に大腿骨の骨頭が入り込むわけですが、臼蓋が浅いなどの影響により関節の動きは正常関節での動きの起動に比べれば悪くなりますので、股関節の曲げ伸ばしが出来る範囲は難い状態が生じてきます。
股関節の臼蓋の構造的な問題で股関節の動きが硬くなりやすいのですね。

股関節は骨盤側の臼蓋が凹面、大腿骨骨頭が凸面で関節を構成しますが、この関節の周りには関節包・靭帯・筋肉などが存在しています。関節包は骨が凹凸で組み合わさる部分を覆う包みで中に関節液(関節が動かしやすい潤滑油の役割)を含みます。靭帯は関節の曲げ伸ばしで一定以上に動き過ぎないようにブレーキをかける役割をします。筋肉は関節の曲げ伸ばしをする原動力となるわけです。
股関節といっても骨以外の筋肉・靭帯・関節包などは、動きやすい状態やその機能がよい状態を保つということは、筋肉・靭帯・関節包はそれぞれ基本的な硬さの違いはありますが柔軟性(柔らかくて伸び縮みが容易なゴムとイメージしてください)が維持されることが最も大切なのですね。
臼蓋形成不全は構造的な問題(変形)があり、基本的には正常な股関節構造に比べると股関節の曲げ伸ばしが動かしにくく、関節拘縮になりやすいのは事実です。
では、臼蓋形成不全は基本的に15〜18歳の頃からすでにあるのですから、今感じている腰痛や股関節の痛みなどは臼蓋形成不全があるから痛くて当然、初期変形があるから痛くて当然と骨の構造のみを痛みの原因と考えることはおかしな事になりますね。

多くの人は15〜18歳の頃から今と同じ様な強さの腰痛や股関節の痛みをずっと感じていたわけではないのですからね。今まで全く痛みが無かったと言われる人の方が多いくらいです。軽い痛みがあった人でもたまに旅行などで歩き過ぎた時などにこわばりの様な感じがあったくらいかな?と言われることも多いです。
構造が一番の痛み原因(関節の不完全さ)なら、痛みが気になり病院受診した今現在の痛みと近いレベルの痛みを高校生(すでに臼蓋形成不全がある)くらいの時から同じ様に痛みを感じていないとおかしいですよね?
そう思いませんか?
臼蓋形成不全や初期変形くらいでは、実際は構造の問題(骨の破壊で痛みを生じていることは無い)は痛みの原因としては弱いのです。
股関節の痛みが気になり、また変形がどんどん進行していくのではないかと不安にかられている人では、骨盤の臼蓋と大腿骨骨頭(太ももの骨)がぶつかって骨が痛みを出していると誤解されたイメージを強く持たれていることも多くみられます。
もちろん臼蓋形成不全は全く痛みに影響していないということはありません、痛みの原因の一つとして考えることは当然です。しかし、Aさんの様に30歳前後の方で股関節や腰に痛みを感じ始めて病院受診した時点での痛みの原因としては、骨の変形以外の問題がはるかに大きいのですね。

股関節の臼蓋で骨が痛みを感じるとしたら、凹凸面の関節軟骨がかなり激しく変形し壊れなければ不可能でしょう。関節内部や周囲での炎症が生じていれば、かなり強い鋭い痛みですから関節の痛みと捉え骨の痛みと考えてもいいのですが・・・
実施に皆さんの股関節の痛みは筋肉の痛みとして特長的な鈍痛だと思いますよ。病院受診前の痛みの増強した日は、痛みが強ければ股関節周囲筋の一過性の小さな炎症が動きの中で起きたとも考えられますが、関節近くで生じる痛みに比べればやはり慢性の鈍痛です。
痛みの強さからも問題は骨ではなさそうですね?

凹凸の股関節周囲には靭帯・関節包・筋肉などがあるというお話をしました。Drの説明でも「股関節周囲の筋力が弱くなっているから痛みが出やすい状態です」「保存療法では股関節周囲の筋力を鍛えるリハビリを行うことが大切です」という説明を皆さん受けていると思います。
そうですね、筋肉が痛みへの対策ポイントとして説明でも出て来ましたね。これはあなたの痛みの原因は股関節の変形(骨の変形があるから痛みが出ているのではない)ではなく、筋肉・靭帯・関節包が影響しているという理解をしていただきたいのですね。

痛みが起こると体にはどの様な反応が生じるかを考えて見ましょう。
例えば日常で一番分かりやすい現象では、冬場のお風呂などで熱いお湯に浸かろうと足先をつけた瞬間に「熱!」と意識されると同時に膝・股関節を急速に曲げて足を引っ込める動作(湯から遠ざけて逃げる動作)が出現しますよね。その時に皆さんは頭の中で足を引っ込めようと考えて対処しているのではなく、自動的に股関節や膝の周りの筋肉に縮めという命令が瞬時に出されて足を引っ込めているのです。こういう自分では制御できない反応は反射というものを利用して行われます。
病院でDrに膝を小さなハンマー(打腱器っていいますが)でトントンと叩かれると、ピクッピクッと膝が伸びる反応が出るかを検査で見られたことのある人は多いと思います。あれも膝の筋肉の腱を叩かれることで筋肉が急速に伸ばされる刺激が入るので、伸ばされる刺激に対して筋肉を元の長さに戻そうとする反射なのですね。
反射とは誰しも持っているものですが、普段から反射が敏感に出ているとちょっとした刺激で筋肉が縮み生活が困難になってしまいます。これを脳が出にくいように普段は押さえ込んでいるのです。

臼蓋形成不全では股関節の形成が不完全だったり、徐々に何年もかけて少しずつ股関節が変形している状態です。股関節の変性は骨組織の破壊ですから、股関節の周囲組織には縮めという反応が何年もジワジワと弱い反応(お湯につけて時の様な強い反応ではない)ですが持続します。皆さんが痛みを感じていても、感じていなくても、痛みを認知するか?認知していないか?は脳の捉え方で決まりますので、意識化される痛み刺激でなくても股関節からの組織破壊に関する小さな情報(弱い痛み刺激)は日々継続され送られているのですね。

股関節からの組織破壊に関する情報(弱い痛み刺激)は神経を使って脊髄へ送られ、脊髄から脳へ情報が送られると同時に、脊髄から股関節周囲の組織にも反射的に縮めという命令が送られているのです。
学生の頃から受診するまでの期間(30歳前後で受診すると10数年間)は、全く腰痛や股関節の痛みが無かったと訴えられる方は多いのですが、冷静に考えるとそれは脳が痛みを認識できていなかった状態ですね。痛みの情報は脳へ送られていたのですが、その情報は脳にとって痛いと感じるか?感じないか?の境界線以下だったのでしょう。
皆さんが30歳前後で、ある日より股関節や腰痛が気になり受診して臼蓋形成不全と診断がついても、痛みを感じ始めた日が変形のスタートし痛みが出始めた日ではなく、以前より弱い痛み刺激が脳へ送られていたけどいままで気づかなかった、ある日を境に感じ始めた痛みは脳が痛みを捉え始めた日と考えるのが的確ですね。

股関節よりも露骨にこの現象が分かり易いのが変形性膝関節症ですよね。膝の変形が始まりO脚ぎみに成り始めても痛みを脳が捉えていないから、多くの人は変形が少しずつ進んでいても膝の状態が悪くなっているという判断(病院へ行こうという判断)をされません。最終的(数年以上の経過後)に脳の感じるか感じないかの境界線を越えて、膝の痛みを感じ始めて初めて病院受診をされるのですが、これらの方々に共通するのは受診前に痛みが出現した日を境に悪くなったと考えられていることです。痛みは感じていなかったけど変形は何十年も前から始まっていたのですけどね。
「悪い=痛み」のみで評価されているのです。痛いか痛く無いかだけで物事を判断されているのですね。

臼蓋形成不全の人でも痛みを感じる日までは痛みが感じていなかった状態ですが、股関節では徐々に少しずつですが変形が進んでいますので、股関節周囲の関節包・靭帯・筋肉には縮めという反射が持続しており股関節周囲の関節包・靭帯・筋肉は徐々に硬くなっていきやすいのです。
特に腰や股関節に臼蓋形成不全の様な問題が無い健常者でも、基本的に股関節周囲の筋肉は硬くなりやすいので、臼蓋形成不全の方は反射などの影響により健常人よりも硬くなりやすいと理解しておくことは大切です。

筋肉が硬いと何が問題なのでしょう?

筋肉が硬く硬化している状態は筋肉に縮めという命令が持続し筋肉の緊張が増加している状態です。例えば皆さんが肘を曲げて力を入れると盛り上がる筋肉は、上腕二頭筋と言われる筋肉です。右の上肢の力をできるだけ抜いて腕を垂らした状態にし左手で上腕二頭筋を触るのと、肘を曲げた状態での上腕二頭筋を触り比べるとどうでしょうか?肘を曲げた状態の方が硬くなっていませんか?
肘を曲げるという動作は上腕二頭筋に縮めという命令(肘を曲げると)を出して筋肉の長さを縮めて力を発揮している状態です。筋肉の緊張状態が増加している状態です。
肘の周囲に怪我などをして反射が続くと上腕二頭筋にも縮めという命令が持続しますから、同じ様に腕を垂らして力を抜いている状態であっても反射により筋肉の緊張が増加して、普段の力を抜いた状態でも筋肉の硬さが増した状態で維持されるのですね。
筋肉の緊張が増加している状態をスパズム(攣縮)と言いますが、臼蓋形成不全では股関節周囲の筋肉にスパズムが生じやすく、その結果として力を抜いた状態でも股関節や腰部の筋肉が硬く触れやすいのです。

スパズムは筋肉に縮めという弱い命令が持続している状態で、常に筋肉がその縮んだ状態で維持されているとその状態で安定するように変化してきます。常に縮んだ状態が安定化してくると筋肉がだんだん伸びにくくなっていくのですね。筋肉が短い状態から伸び難くい状態に維持されていると、筋肉は急激に伸ばされそうになると元の長さに戻そうとする反応が、膝のトントンと叩く検査でみられるとお話ししましたが、スパズムが亢進していると筋肉の長さを元に戻す役割の筋紡錘が働きやすく(敏感に反応する)なっています。

臼蓋形成不全の状態で股関節周囲の筋肉が硬化していると、股関節を曲げたり伸ばしたりするとピリッとする瞬間的な痛みが最大屈曲・最大伸展できる領域近くで感じると思います。臼蓋形成不全や変形初期では股関節の凹凸面の問題よりも股関節周囲の筋肉(靭帯・関節包なども関係している場合もあります)などが伸び難く(スパズム)なって股関節を動かすと筋肉が伸ばされる負荷についていけないため瞬間的な痛みを出していることが多いのですね。もちろん靭帯や関節包もこの伸びないという反応が増してきますが、臼蓋形成不全での股関節の可動域の低下が徐々に進行するのは関節拘縮に進んでいるということです。初期の頃は筋肉の要因が特に大きくて靭帯や関節包が影響してくるといよいよ本格的な拘縮となってしまいます。

人は歩行したり立ったり座ったりと、いろんな動作を日常行っていますよね?人の動きにはいろんな関節が連動し動いて初めて滑らかな動きが誘発されます。
股関節の動きが悪いとその動きの低下を膝や腰椎など他の部位でカバー(動きや筋活動が大きくなる)しますので、日常生活の動作では腰部や膝周囲の筋肉などもいつもと違う動きになってきます。すると疲労性による凝りや痛みの増加として出現してくることは多々ありますね。臼蓋形成不全などや変形初期では今まで痛みがなかったけど、いよいよ股関節周囲の筋肉が硬化してきて脳が痛みとして捉え始めます。痛みを感じていなかった時期から疲労してきていた股関節周囲の筋肉は悲鳴を上げ、痛みによるスパズムの亢進でさらに股関節周囲筋の硬化を強めますので、それぞれの関節の連動性がさらに低下した状態で歩くことになります。痛みを感じ始めた日を境に、いままで歩けていた距離でも痛みの出やすい状態へと陥っているのです。
柔軟性というのは各関節の連動した滑らかな動きを誘発し、歩行などでは自然と力まずに動けるという状態から同じ量を歩いても疲労しにくいという動きを誘発します。痛みによるスパズムは股関節の柔軟性を低下させ歩行などの動作における各関節の連動性を大きく低下させ、結果的に無駄な力を利用する代償動作(痛みなどで動かし難い部位を他の部位を多く使うことでごまかす動き)を使うため疲労や痛みが出やすくなる悪循環に入ってしまうことが多々みられます。

痛みが誘発されやすい人で、何か普段の動作と違う動き(仕事や趣味で)を行った翌日に股関節あたりに痛みが出て突っ張りやすい、階段の昇り降り(アップダウンのある道などの歩行などでも)をすると股関節の辺りに痛みが出るなどの症状がある人も多いと思います。
これも、一見筋力が不足しているからと考えられるのですが、股関節周囲筋の柔軟性や伸張性の低下が問題になっている事が多いようです。例えば階段などの段差を昇降すると考えると、股関節の前面の筋肉(太ももの付け根あたり)を触りながら昇ってみてください。股関節の前面は一段上の階段に足をついて反対の足を引き上げていく時に力をいれた状態(筋肉を縮ませた状態)から股関節が伸ばされていきますよね?この時に力が入って筋肉の長さは縮められている状態から力が入ったまま伸ばされていくという運動を行っています。伸張性収縮という運動で筋肉への負担が大きい動き(強い力が出ているが筋線維の損傷を起こしやすい収縮の形態)です。階段を降りる時は股関節ではお尻側が同じ様に伸張性収縮の状態が繰り返されます。

階段や坂道などの歩行が多かった翌日などに痛みが出る時は、股関節周囲筋の伸張性不足による運動への筋線維の耐久性低下(繰り返し伸ばされる刺激についていけない)が影響しており、単純に筋力(筋の太さ)が不足しているからという原因ではないのですね。
こういう股関節の柔軟性低下も、何年も前から徐々に進行してきていたのですが、痛みがないから気づかれないのですね。痛みが出てあれ股関節が曲げ難い?と気づくか、もしくは薄々気づいていても痛みが増してきて初めて本当に問題だと考えるようになるのですね。痛みを感じている状態ではスパズムはさらに強くなりますから、痛みを感じ始めた日を境に急激に股関節の変形などが進行したイメージとなり、痛みが出た日からは今までと同じような歩行量でも痛みが生じやすくなるというパターンです。

臼蓋形成不全の診断を受けて説明を受けたばかりの患者様は?

・関節の変形がもともとあり、痛みの出た日から変形が進み出して痛みが増してきたという考え。
⇒×です。

・大腿骨頭と臼蓋の形成不全・初期の軽い変形でも股関節を動かすと骨と骨がぶつかり痛みをだしているという考え。
  ⇒×です。

・この先(数年先のイメージ)は関節が変形していき痛みがどんどん増して歩けなくなるかもしれない。
  ⇒×です。

もう説明することもないですよね?そんなに急いで×のイメージを持つ必用はないことをご理解いただけたと思います。

股関節の臼蓋形成不全は骨の成長の終わる頃(15〜18歳くらい)には既に存在していたということですから、その後何が大きく変化していくかと考えると?
30歳前後で臼蓋形成不全の診断を受ける人では、大きな関節の変形はないと思いますし、あっても初期の軽い変形ではないでしょうか?
20歳台に入り皆さん仕事を行う様になり、体は疲労し全身は硬化するような動作(デスクワークでも体を動かす仕事でも働くことで体がリラックスしスッキリするような動作は行われない)を日々繰り返しています。
股関節の骨構造が正常な人でも股関節は硬くなりやすい状態であり、多くの人が小学生くらいの頃と20歳過ぎてからの股関節の硬さは大きく増していますよね?
開脚いつのまにか狭くなってきていますよね?

股関節の硬さは股関節の動きの硬さというわけです。股関節の凹凸を自転車の歯車とチェーンとの関係で考えてください。買ったばかりの頃は何もしなくとも歯車は良くまわりチェーンも静かに回ってくれます。何も整備せずに数年経ち、チェーンの油が乾いて歯車やチェーンが錆びてきて変形してくると、ペダルを踏み込むごとにカリカリカリなどと音がして歯車やチェーンも回りにくくなりますよね?
そうなると動きも悪くなるし、摩擦も増すので歯車やチェーン自体も壊れやすい状態となり乗れば乗るほど壊れていく方向に(悪循環)進んでしまいます。
皆さんの股関節も一緒ではないでしょうか?
20歳を過ぎて運動量は低下し、年齢を重ねるごとに股関節だけでなく体全体は硬い方向へ進んでいくのですから、臼蓋形成不全があろうがなかろうが同じです。整備不良の生活を繰り返して股関節を自ら硬く動かし難い状態へ作っていっていませんか?
臼蓋形成不全での痛みの原因は、多くの人で整備不良によるものと言えます。
だから、臼蓋形成不全の診断を受ける前に痛みが増した人でも、手術をしないでリハビリを行うと痛みが軽減することが多いのですね。

30歳前後である日を境に感じ始めた股関節の疼痛は?
臼蓋形成不全があり骨の問題は確かにありますが?
股関節の痛みの原因は、根本的に日々の生活の繰り返しにおける整備不良にあるのではないでしょうか?
その結果がある日を境に感じ始めた痛みであり、その後も「どこかに手術をしなくても上手く痛みを治してくれる人がいるのでは?」と依存的な間違った思考を修正でないで、臼蓋形成不全における一番大切な対策で一番効果がある自主的な取り組み(継続的な運動)ができないでいる人は多いのですね。
依存からの脱却をできないから、痛みを感じ始めてからも整備不良を続けるから好転しないことが多いのです。
下手なリハビリや民間療法などに無駄にお金を捨てるのはぜひ卒業していただきたいですね。
もう一度言いますね。
臼蓋形成不全における痛みの対策は皆さん自身の継続的な取り組みが一番の対策であり一番効果があるのです。

(3)不安と痛みとの関係

不安や気分の落ち込みで痛みを感じると聞くと皆さんはどの様に考えますか?
「私は精神病じゃない、私の場合は痛みに気持ちなど関係ないし、臼蓋形成不全が痛みの原因だから体の問題(骨の変形の仕方で痛みの強さが決まっている)なのだ!」
今股関節に感じている痛みについて、痛みの原因は体の問題から発生しているのだと確信していませんか?
本当に体だけの問題なのでしょうか?

(2)の痛みと臼蓋形成不全の関係でも、股関節の骨の変形が痛みの原因ではなく、筋肉・靭帯・関節包などの硬化が臼蓋形成不全や初期の変形性股関節症での痛み要因としては大きいという話を繰り返し述べてきました。
やはり筋肉・靭帯・関節包などの痛みが原因なら、骨じゃないけど結局は体の問題だよね?
ということになりそうです。

整形外科の疾患では、骨折や関節の変形など見た目にハッキリ分かりやすい体の損傷や変化がまずあります。Drや理学療法士や患者などの全員が問題を見て取れるし、共通認識として体の問題を共有できます。
骨が折れているから、ヘルニアが圧迫されているから、捻挫をしているから痛いのでしょうね?そういう説明でそういうものだと理解するという形(痛みについて単純すぎる間違った認識)が整形外科の患者様には多くみられます。

痛みというのは原因(体の組織損傷)の問題だけでなく、情動などが絡み総合的な結果として痛みの強さや質などが決定されます。しかし、皆さんは意外に今感じている痛みについて、臼蓋形成不全だから体の問題のみで痛みの強さや痛みの質が決まっているというイメージを持っていませんか?
もしそう考えているなら大きな間違いです。

臼蓋形成不全の患者様では何が痛みと関係しているかと考えると?まずは不安や恐怖を第一に考えなくてはいけません。ある日を境に股関節に痛みを感じるようになり、痛みが持続するようになり病院受診をすると臼蓋形成不全という診断がつくわけです。
股関節の臼蓋が浅い、軽度の変形がある、将来的には変形性股関節症に進行し股関節を人工関節に変える手術が必要になることもある、変形が軽度のうちに自骨などを利用した手術など、突然に正常だと(痛みはあったが股関節の変形があるなどとは夢にも思わなかった)思っていた状態から股関節に障害を抱えているという状態へ気づかされるのですから、その時の不安や恐怖はとても大きなものでしょう。

股関節がどういうスピードで変形していくのか?手術をするべきか?今感じている股関節の痛みは一生続くのか?痛みはどんどん強くなり歩けなくなるのでは?股関節の問題で仕事も出来なくなってしまうのでは?
多くの悩みが出現してくるはずですね。多くの疑問に対して自分の中で納得した答えは早くみつかるものではありません。いろんな疑問はそれぞれの疑問について違う不安や恐怖を生じさせるでしょうし、それぞれの不安が集まって大きな不安や恐怖としても生じさせるでしょう。
診断を受けたばかりの頃は臼蓋形成不全について、将来の予測などがつかないことは不安や恐怖の持続に大きく影響しているようです。不安や恐怖が持続すると余計に股関節の状態や痛みなどへ常に意識を向けさせてしまうのですね。

例えば住み慣れた家に帰ったとします。いつも通り玄関の鍵を開けて家に入ると、家の奥からコトンという小さな物音がしました。人によりこの時に考える音の原因を予想する内容は違いますし、それに伴う不安や恐怖の大きさも違うでしょう。
しかし、誰にでも共通するのですが、不安や恐怖を少しでも感じると周りに注意しながら周囲の状況へ視覚などの五感を敏感にさせながらいつもよりは慎重に部屋の奥へと進まれるでしょう。注意がいろんなものに向けられ室内の光や影や温度、いつも気にならない家の中の音(電化製品の小さな音など)などまで、視覚や聴覚などで得られる情報に敏感になると思います。
皆さんへの臼蓋形成不全の説明後の不安・恐怖は例え話の様に室内の小さな物音を聞いた後と同じです。皆さんに不安・恐怖を生じさせて股関節の痛みの質や痛みの強さへ敏感にさせてしまうのですね。股関節のちょっとした変化に一喜一憂してしまうのです。

臼蓋形成不全ということは骨の変形があるが、病院受診する前に感じ始めた痛みの要因としては筋肉・靭帯・関節包などの要因が大きいというお話もしました。病院受診をされても痛みが急激に減少することはありません。
受診前の痛みの強さを10段階で表現すると(0は全く痛みが無い状態、10は痛みが一番強い状態)、例えばAさんの痛みの感じ方(主観的な評価)は6の痛みだったとしましょう。
病院受診し臼蓋形成不全の診断とその説明を受けた後には7や8などに上がる可能性はあります。特に臼蓋形成不全の診断を受けて骨の変形が急激に進むわけでもありませんが、皆さんの不安や恐怖が痛みの強さを上げる可能性はあるのです。そうですね、痛みは脳が如何に感じるか?というものですから、いろんな情報を元にして最終的に痛みの強さが決まりますから、体の状態だけでなく皆さんが感じている痛みの強さは不安や恐怖で大きく変動する可能性があるということです。

不安や恐怖が逆に軽減してくると、痛みの強さは体の状態が変化していなくても楽に感じられることもあるということにもなります。
臼蓋形成不全の説明を受けてからは、股関節がどういうスピードで変形していくのか?手術をするべきか?今感じている股関節の痛みは一生続くのか?痛みはどんどん強くなり歩けなくなるのでは?股関節の問題で仕事も出来なくなってしまうのでは?など、その他にも多くの悩みも合わさり予測の不透明さにより不安・恐怖が増してきます。

どうすれば不安や恐怖が軽減されると思いますか?

不安や恐怖の軽減には、間違いなく臼蓋形成不全についての正しい情報と今後の正しい経過予測が大切になってきます。
インフォームドコンセントという言葉が近年医療職では重要視されるようになってきました。出来るだけ患者側が理解しやすい言葉で理解しやすい説明を医師やコメディカルは行うということを重要視する考えです。
臼蓋形成不全の診断を受けて治療方針などをDrから説明を受けると思いますが、多くの方が最初の説明で聞いた時のイメージを強く維持されていることが多いようです。説明を受けた段階では皆さんの知識は臼蓋形成不全について全く知らない状態と言えます。臼蓋形成不全と知りショックもあり不安があるのに1回の説明で理解することなど不可能なのですね。
1回の説明で正しい理解は不可能です。受診の度に何度も繰り返し長々と説明をしてくれるDrなどはほとんどいないと思います。また、もし説明してくれる先生がいても皆さん自身が学習し冷静な視点で正しく理解できる状態にならないと何度説明を聞いても正しい理解は出来ないので意味がありません。

多くの人は病院受診し診断を受けてから病状説明や治療方針の話があるので、臼蓋形成不全についてほぼ知識の無い状態で話を聞くことになります。患者さん側としてはここで理解しようとしても難しいのが現状ですよね?
パソコンを初めて買いに行って、電気屋で簡単に買いたいパソコンの機能などについて説明があっても、パソコンを普段より使っていない人ではちんぷんかんぷんですよね?後は接続からメンテまで全て自分でしてくださいではお手上げ状態になってしまいます。臼蓋形成不全の説明を受ける時はこの状態とよく似ていますね。
まず皆さん自身が正しい理解を出来なければ不安や恐怖は無駄に大きい状態で持続してしまう危険性があります。いくら自分自身が冷静なつもりでも、知識不足は痛みを過剰に捕らえ痛みへ敏感になり、痛みへ執着している状態を作り出している不安や恐怖の原因の一つでしょう。

まずは、臼蓋形成不全についてネットで情報を集めたり、本を買って読んだりと基礎知識を学ぶ必要があります。基礎知識を学びながら治療やリハビリなどについてDrやPTなどに不明な点を聞いて考えることで、不安に感じている要因が冷静な視点と情報により漠然とした不安が軽減してくると期待できます。
股関節の痛みに過剰に敏感にならない、執着しないためには皆さん自身の基礎知識があってこその冷静な視点ですから、不安・恐怖の軽減には皆さん自身の勉強する努力がないと難しいのですね。まずは、臼蓋形成不全の診断を受けてから漠然と持たれた悪いイメージをクリアーにしていき不安・恐怖をいかに軽減させていくか?というのが一番大切なリハビリだと私は思います。

股関節の痛みを軽減させるために、最初に取り組まなくてはいけない基本的なリハビリですね。これが上手くいくと慢性的な股関節の痛みが軽減する可能性は十分にあります。だまされたと思って取り組んでみてくださいね。

臼蓋形成不全である日を境に痛みが出て持続しているから病院受診を行うのですが、病院受診してリハビリを行って1ヶ月ほどが経過しても、なかなか痛みが軽減出来てこない方も実際いらっしゃいます。
その場合はどの様に考えるでしょう?
やはり痛みが減らないし骨が変形しているから痛みが続いている・・・
痛みは一向に減らないし今後は痛みが増して行き歩けなくなるのでは・・・
股関節が少しずつ壊れて変形が進んでいるのでは・・・・・

まるで痛みの出た日から急速に股関節の状態が悪化しているイメージを持たれるのではありませんか?
そのイメージは股関節の持続する痛みが原因しているとも言えますね。痛みが持続すればするほど本人は痛みを常に感じているのですから、痛みについての思い込みは確信へと変化していきます。

股関節の骨が痛みを出している・・・・

確かにその様に考えられるのもわかります。本人にしか分からない痛みが持続しているのですからね。他者には分からない痛みですから。

痛みの項目でもお話ししましたが、ある日を境に痛みを感じるようになるのですが、その痛みが強い場合は過剰な運動や動作などによる一過性の炎症による痛み増強と考えられますよね。これが持続しているということは炎症が持続しているのか?炎症が発生した股関節周辺の筋肉に生じているスパズムが解除(反射が続いている)されていないための痛みのどちらかだと考えられます。
確かに変形性股関節症や変形性膝関節症では関節の変形があり炎症が増強していれば激痛が生じます。これは正確には骨の痛みではありませんが、骨の変形が影響している関節内の炎症による痛みと考えていいので、骨の痛みと捉えていただいてもかまいません。
では、痛みを感じ始めた日から受診し1ヶ月ほど持続している痛みは炎症の強い激痛とは違う痛みの強さではないですか?どちらかというと鈍痛だと思います。
皆さんの腰や股関節に感じている痛みが鈍痛であれば筋肉の痛みであり、それは骨の変形が進んでいるから痛いということにはならないので安心できませんか?
痛みの持続している人では股関節周囲の深部筋に小さな炎症が持続していたり、深部筋のスパズムが解除できていない状態ですから、これは時間経過とともに軽減してくる痛みです。

適切なリハビリと皆さん自身の学習と努力が継続されていれば、安定的な痛み軽減までの期間には個人差がありますが、遅くとも2〜3ヵ月もすれば受診したピーク時の股関節痛は、0にはならなくとも必ず安定的に軽減してくるはずです。長期化する場合はリハビリの内容が悪く軽減できていないことも考えられます。
受診してリハが開始されて1ヶ月程度で痛みがなかなか軽減しないからと言って焦らないでください。その焦りは不安や恐怖が影響しているはずです。焦りが生じている状態では必ず股関節の痛みに敏感になり痛みに執着しているはずです。
不安・恐怖を増強させ焦りを出させている原因は何ですか?
しっかり学習し冷静な視点を持てるよう努力してください、焦っているということは正しい情報を持って頭では理解しているつもりでも、まだ本心から納得されていないのでしょう。きっと間違った認識(骨が痛みを出している・骨の変形が進んでいる)をどこかで信じているはずです。

間違った知識が存在している人は、リハビリも依存的であり自宅でのエクササイズなどの取り組みも必ず継続出来ていないはずです。守りの思考と守りの行動(安静に過ごす時間が多い)が多いのです。
人の認識が変化するということは普段の行動が変化するということです。皆さんがこの文章を読んでいただき「そうそう」と共感いただいて「自分でも頑張ろう」と思っていただいても、普段の行動が変化しなければ本心から納得していないということです。
不安・恐怖を軽減させることは今感じている痛みを軽くするためには重要です。不安や恐怖を軽減させるためには、正しい情報を元に学習し冷静な視点(痛みの原因をしり予測をイメージできる)を患者自身が持つことで初めて軽減できてきます。その冷静な視点と知識を元にして日常生活での行動変化(怖がらずに運動を導入する・間違ったイメージによる意味の無い動作抑制を解除していく)が継続されてくることで、皆さん自身が考えられていることが正しかったと確信できてきますし、行動を継続された結果は自信と正しい信念として確立されることで不安・恐怖が大きく軽減(マイナス思考の軽減)されると思います。

痛みと不安は構造的な問題があっても痛みの感じ方を強くもしますし弱くもします。持続する慢性痛ではうつ症状が必ず関係してきますが、臼蓋形成不全の痛みも持続すれば慢性痛と同じ不安・恐怖が増しうつ症状が影響してくるでしょう。持続する股関節痛に対して構造だけで痛みを考えていては間違った対処法を取ってしまい悪循環(生活内で安静を多く取る)に入り込む可能性を秘めています。自分で自分の首を絞めていく結果になるのですね。
必ず臼蓋形成不全を受けたばかりの頃は誰でも不安・恐怖が増しています。
どうしたら不安・恐怖は軽減できますか?誰が不安・恐怖を軽減させられるのですか?
皆さん自身の学習と継続的な行動でしか不安・恐怖は軽減出来ませんね。
さあ自分が主役で継続的に頑張ってみてください。

(4)臼蓋形成不全へのリハビリテーション

臼蓋形成不全におけるリハビリテーションに大事な事はなんでしょう?
一般的に説明される様に、筋力が落ちているからマシーントレーニングやセラバンド(ゴムのバンド)を使い筋肉を太くすることが大切なのでしょうか?
股関節の関節可動域が大きく維持されていることが大切であり、筋肉のスパズムを抑制するためにもストレッチをたくさん行う事が大切なのでしょうか?
股関節の負担を減らすために日常生活で歩行・長時間の立位時間・坂道や階段などのアップダウンを歩かない・床の物をしゃがみ込んで取らないようにすることなどは大切でしょうか?

一般的にリハビリや周囲の人から腰痛や肩こりなどがあると腹筋が弱いから、肩の筋肉が細いからという話しを聞くことが多いと思います。今まで担当してきた多くの患者様でもこの様な発言が聞かれました。
筋肉が太ければ痛みを感じないか?というと、そんなことはありません。筋肉の太さと慢性痛はほとんど関係ないと思います。
スポーツ選手が怪我をしてリハビリを行っている映像などがニュースやドキュメンタリーなどで見られることがありますが、筋肉を太くすることで怪我をした部位をカバーし痛みを改善するという意味合いのコメントなどがリハビリしている映像と一緒に流れます。
皆さんは「なるほど」と思うわけです。
それは怪我などによる組織損傷による安静期間が影響して、急性痛の時期が終了(日常の動きでは痛みは全く出現しない)し高度な動きを要求される時期に入ったスポーツでの話です。
安静期間の影響で最大筋力・持久力が低下するのですが、例えばサッカー選手などでボールを蹴る瞬間に損傷した周辺が傷む・1試合プレーして走っていると後半は損傷した周辺の痛みが増してくるなどのレベルにおいては、怪我で生じた組織損傷の周辺筋などの最大筋力・持久力などが不足しており運動量に対しての耐久性が不足していると言えるでしょう。

臼蓋形成不全の方の日常生活内で感じる痛みは慢性的な筋肉の痛み要因であり、スポーツ選手の様な高度なレベルでの最大筋力・持久力などによる痛みとは性質が違います。
単純に股関節周囲の筋肉を太く鍛えるというイメージでのリハビリは、たぶんいくらやっても痛み軽減の結果もでませんし意味が無いと言えます。
30歳前後で痛みが出現してきた臼蓋形成不全の方では、日常生活内での動作において痛みで困っていますよね?日常生活の運動量程度に股関節の最大筋力や持久力が大きく痛みの原因として影響していることはほぼありませんね。筋力増強しなくとも股関節の痛みはリハビリで軽減できることからも最大筋力などは特に関係ないことが理解できます。どちらかというと持久力の方は影響あるでしょうが、それもすごく大きな要因ではありません。

臼蓋形成不全の人などでは階段や坂道などを歩いた翌日などに筋肉痛に伴う股関節の痛みや凝りの増加が問題となりますよね?
この動作で影響していると考えられるのは筋肉の伸張性収縮(力を入れて筋肉が縮まっている状態から引き伸ばされる形態)に対する筋肉の耐久性の低下(筋肉が繰り返し伸ばされる刺激についていけない)が予想されます。歩行などが楽に行えるようにという大義名分で筋力をつける(筋肉を太く鍛える)という指導などが一般的にはされるのですが、私は股関節周囲筋が太くなったから痛みが軽減して歩くのが楽になったというのはあまり見たことがありません。
実際には股関節周囲の筋肉を太くするために股関節に過大な負荷をかけるトレーニングもできないので、リハビリで股関節周囲筋が明らかに大きくなるトレーニングは出来ないと考えられます。
しかし、多くの患者様では筋肉を太く鍛えないといけないと思い込んでいる人は非常に多く驚かされます。Drの言葉とは本当に影響が大きなものであり病状説明では慎重に言葉を選んでいただきたいと思います。Drの何気ない一言がいつまでも患者の間違った信念として存在しリハビリを邪魔することがあるのですね。

股関節周囲筋の筋肉の太さが問題ではなく柔軟性(筋肉が柔らかく伸び縮みしやすいか)や弾力性(指で押した時の筋肉の硬さ)がどれだけ維持できているかがポイントになります。股関節周囲の筋肉を若干太く出来ても柔軟性や弾力性がないと、階段昇降や坂道を歩く時などは、特に股関節周囲筋は力を入れた状態で筋肉が伸ばされるのですから筋肉の線維はあいかわらず切れやすそうじゃないですか?
筋線維の微細な損傷は筋肉痛の原因でもあり、筋肉痛が生じるといつも感じている股関節の鈍痛を強く感じさせる原因となります。股関節の痛みが持続している人では運動を行うと2〜3日筋肉痛が股関節周囲に生じやすいですし、いつもの痛みも筋肉痛のある2〜3日間は強く感じているはずですよ。数日安静にしていると筋肉痛と合わせて股関節の痛みもいつもの強さに軽減するはずです。

股関節の柔軟性の大切さを考えるとしたら、例えば高層ビルをイメージしてください。高層ビルの基礎部分がいくらコンクリートが頑丈で太くても遊び(地震に対する力を逃がす柔らかさ)がないと地震の揺れに耐えられずに壊れますよね?
この基礎部分の機能が股関節と同じですよね?
足を動かすのに股関節周囲の筋肉がいくら太くても柔軟性がないと股関節の筋肉はすぐに壊れやすそう(軽い運動でも筋肉の線維が損傷しやすい)じゃないですか?
同じですね?
臼蓋形成不全や初期変形では股関節の筋肉を太くするという目的よりも柔軟性・弾力性を如何に向上させるかという取り組みが重要になってきます。
皆さんの実施されているリハビリはポイントがずれていませんか?よく考えてください!
筋肉を鍛えなさいという指導のもと筋肉を太くすることを第一目標にトレーニングをしても、なかなか痛みは軽減できないどころか逆に痛みが増すことも多いことも事実です。
これは一般的に使用されているトレーニングマシーンなどでの終動負荷形態の運動は血圧を上げて血流を阻害しますので、痛みを生じている筋肉などはスパズムを増加させてしまうのですね。
スパズムの増加は?痛みの増強へ繋がります。
これポイントですよ。

トレーニングマシーンやセラバンド(チューブトレーニングの一種)などは、連続でやればやるほど筋肉はどんどん硬さを増していくはずです。これらの運動で股関節に連続で負荷を加え続けた後(運動直後)に、歩行や股関節の曲げ伸ばしを行ってみてください。必ず股関節の動きが硬くなりぎこちない動きが出ているはずです。
運動後の歩行などでもチェックしてもらうと分かり易いと思いますが、トレーニングマシーンやチューブトレーニング直後にすぐに歩行してみてください。股関節の動きが硬くトレーニング実施前より歩行し難いと感じたり、股関節や足が突っ張っていると感じるならその運動はマイナス要因が大きいでしょうね。
疲労物質も溜まり、ただでさえ股関節の変形による反射の影響が強い股関節周囲筋へ強力に自己努力でスパズムを亢進させているのです。慢性的な痛みの原因である筋肉のスパズムが増強するのですから、運動中や運動直後はもちろん痛みが増すでしょうし、その様なトレーニングを継続しているといつまでも痛みが持続するのは当然ですよね?トレーニングの度にスパズムを亢進させる刺激を定期的に入れ続けるのですから。

運動して股関節の動きを悪くしている?
それって本当に正しトレーニングなのでしょうか?

股関節の筋肉を鍛えているのだから、股関節の疲労による一時的な硬さの向上はトレーニングの効果であって、必要なのですという説明をする理学療法士がいるかも知れませんが、それでは股関節の筋肉を太くすることだけを第一目的にトレーニングしていることになってしまいます。
皆さんのリハビリの目的はなんですか?
股関節が動きやすいく痛みの少ない状態を目標にトレーニングされるのではないですか?
股関節の筋肉を維持することで関節への負担を減らしたいと考えてトレーニングするのではないですか?
自転車の歯車とチェーンの話しを思い出してください。股関節の筋肉が太くなると筋肉は縮んだり伸びたりしやすくなるとイメージできますか?体操選手やバレーリーナや力士が筋肉を太くして体が柔らかくなったと発言していることを聞いたことありますか?
そんな発言を聞いたことはまず無いと思いますよ。
股関節周囲筋の筋肉を過剰な負荷を加えて太くするトレーニングは全く意味が無い(高負荷での運動)ことが分かりますよね。大切なのは股関節の柔軟性・弾力性を向上させるトレーニングなのですね。

しかし、マシーントレーニングやセラバンドが全く意味がないと言っているわけでもありません。痛みを生じている筋肉に対しては、終動負荷形態の運動では低負荷で高頻度の持久力を上げるための運動は実施していただきたいと思います。この時の運動量の目安としては可動域内を大きく軽い負荷で滑らかに動かす様に心がけてください。少ないセット数で運動直後の股関節の動かし難さが増さない量に調整されることをお勧めします。
少ないセットを実施し休憩を入れて再度小セットを実施するという様にして休憩をしっかり入れてから繰り返し行うことが大切です。

筋肉を太く鍛えるというイメージから、軽い負荷を加えて関節を動かすことで股関節周囲筋を適度に疲労させることで筋肉を緩ませるというイメージでトレーニングを継続していただきたいと思います。継続いただければ、そんなに力まないできつくもないトレーニングですが十分なほど筋力は維持され尚且つ筋力は向上されてくると思いますよ。
多くの人では学生の頃から力んで強く疲れる内容のトレーニングが理想的なトレーニングという幻想を持っているものですが、それは痛みを生じている筋肉に対してはスパズムを亢進させるだけで悪影響のみを与えるトレーニングだということをご理解ください。
根性のトレーニングでリハビリが成功するのは漫画だけの世界です。

皆さんの股関節の痛みが炎症による急性のものと慢性の痛みとを区別できないで、歩行などを制限してストレッチなどを多く行うように指導する勉強不足な理学療法士も時々いると思います。
これが一番困るのですね。

ストレッチは筋肉への痛み刺激による反射を抑制する技術であり、スポーツ現場やリハビリでも多用される技術です。その効果も確かに良いものですが、臼蓋形成不全においてストレッチ(本になっている自分で行うストレッチ)を一日に何度も行っても、股関節の可動域が明らかに向上することはほとんどありません。
臼蓋形成不全の診断を受ける人は関節の変形による構造上の問題で可動域が狭い人が多いですし、股関節の柔軟性を意識した取り組みを10代から継続していることも無いので、既に股関節周囲筋(靭帯や関節包も硬くなってきており軽い拘縮を生じている)がガチガチに硬い人が多いのですね。
臼蓋形成不全でなくとも股関節の硬さがある程度年数をかけて完成(開脚などが出来なくなって数年が経過している人)している人の股関節はストレッチをいくらやっても可動域が大きく改善されることはありません。
ヨガ・ティラピスなどのエクササイズはある程度各関節の硬さが完成された人(20歳代で体が硬い人)などは、いくら頑張ってもインストラクターの様に柔らかくなりません。
なぜかというと関節拘縮を各関節が起こしており、ヨガやティラピス程度の筋伸張による運動では変化しないのです。(実施後は柔らかくなりますが1時間もせずに戻りますよ)
変化する人しない人はハッキリ別れるはずです。

現在の皆さんの維持されている股関節の可動域を大きく広げることが一番重要なのではなく、現在動かせる可動域を出来るだけ柔軟に滑らかに動かせるようにストレッチやエクササイズなどを継続していくことが重要です。
可動域の変化(可動域が広がったかな?維持できているかな?)が歩行や動作の容易さとして単純に結びつくことはないので、ストレッチやエクササイズを継続している結果を可動域の変化で評価しても意味が無いのですね。ストレッチやエクササイズが日常生活における動作遂行の容易さと連動しているかで評価されなくてはいけません。
だから、股関節の変形が進むのでは?という不安を元に日常生活の動作を抑制(安静に過ごす時間を増やす)して、逆に自宅でのエクササイズで単純にストレッチの本などを見て1時間も2時間も無駄にストレッチを長く続けたり、理学療法士にストレッチを何十分もみっちりやってもらっても、ストレッチ直後は若干柔らかさが増しても数時間もその柔らかさは維持できません。
柔軟性を向上させることで生活内でのいろんな動きに柔軟に対応できる股関節周囲筋を作りたいというのが目標で、可動域が広がったからと言って皆さんの日常生活内で感じている動作時などや慢性的な痛みの改善とはならないことも多いですし、皆さんの痛みと動作の容易さに股関節の可動域制限が必ず影響しているとは限らないのです。

リハビリを継続出来ているという満足感のためのリハビリ内容にならないように気をつけてください。

日常生活の動作における痛みの出方や出る場所を確認して評価し、それに対して動作を利用して自然とストレッチを加えていく動きを繰り返し行っていくことが大切です。
1日は24時間で動いています。たたった何十分かのストレッチやエクササイズが重要ではなく、日常生活内での動きそのものが繰り返される頻度は多く一番重要な運動だと思います。
皆さんの日常生活自体がエクササイズだと意識して生活することが大切ですね。
皆さんは自分で行うエクササイズは1日1時間、リハビリは病院で20分、その他は生活と分けて考えられている人が多いと思いますが、24時間全てがエクササイズでありリハビリだと考えて取り組まれてください。

じゃあどうします?日常のエクササイズってなんだろう?

1日の中で繰り返される動作は?
仕事などで運動量や頻度の違いはありますが、以下の動作は皆さん行われていますよね?

  1. 歩行
  2. 階段昇降やアップダウンの道。
  3. 立ち上がり動作や立位から座る動作
  4. 立位保持
  5. 椅子に座る
  6. 持続的な中腰姿勢やしゃがみ込み動作

上記の普段から行っている動作は全て1日の中で何回も繰り返されている動作ですね。これらの動きは股関節の痛みなどがあると変化しやすいですし、臼蓋形成不全で股関節周囲筋の硬化から動きの悪さを引き出し、代償動作を生じさせていると思います。
例えば歩行などでは、皆さんは歩行動作の問題点を持っている可能性があります。個々により骨格構造や体の発達の違い(個々により筋力の強い部分などに差がある)などにより、歩行の仕方などに若干の違いがありますが、基本的には正常歩行と考えられる基本的な動きをしています。

臼蓋形成不全では股関節周囲筋の硬化とバランスの不良による代償動作による歩行がでていることが多く、一番分かり易い変化は痛みの強い時にみられるびっこを引くような歩行ですよね。痛みを感じ始める前や痛みのピークが過ぎてあまり気にならない状態でも、痛みの強い時期に比べればほとんど目立ちませんが代償動作を利用した動きによる歩行を続けていることが多いのです。
一日に何歩皆さんは歩きますか?股関節の曲げ伸ばしを1日に何回繰り返していると思いますか?これに比べればストレッチを少々長い時間を頑張っても微々たるものだということが理解しやすいと思います。

代償動作はなるべく弱い部位を使わずに他の強い部位を使って誤魔化している動作ですから、皆さんが股関節を鍛えたいと考えるなら代償動作を抑制した歩行を継続していないと弱い部位を一向に使用しない歩行を継続してしまいます。
歩行では使いたい部位を使えない状態を続けてしまいますね。
股関節の筋力を鍛えたいなら、日常の繰り返される動作で体の使い方を無視し、単関節を集中的に負荷をかける筋力トレーニングをいくら行っても意味が無いのですね。
動きの改善に繋がらないトレーニングになってしまいます。
歩行では股関節の周囲にあるいくつもの筋肉の活動が滑らかにタイミングよく運動が連鎖して広がることで、楽にスムーズな歩行へと繋がります。まして、股関節だけでなく他の関節も股関節との連動した動きが合わさることで、スムーズな動きが可能になってくるのですね。
歩行以外の動作でもどういう動きを行い、またその動きに代償動作があるならそれを抑制して、弱い部分の筋活動を促す(動作の中で弱い部分を使う)ような動作を継続していくことが一番効果的な筋力トレーニングだということがご理解いただけるでしょうか?

日常生活内における繰り返される動作を無視した筋力トレーニングは意味がありません。股関節の滑らかな動きを求めているのに、理学療法士のリハビリ後や自宅でのエクササイズの後に股関節が突っ張って動かし難くなる、歩行がスムーズに出来なくなるという運動量は意味がありません。逆に悪化させるリハビリ内容ではないでしょうか?
負荷をかけた筋力トレーニングで筋力がついた結果(筋肉が太くなって)動きが良くなるというのは、骨折後の明らかな筋萎縮(折れていない方と比べると足が細くなっている)などの患者様では一部当てはまりますが、Aさんの様な臼蓋形成不全の股関節周囲筋の状態程度では、まず当てはまりません。股関節周囲筋の調整と日常生活の動きの修正(代償動作の抑制)を継続していくことで、動作の容易さは向上しますし筋力も発揮しやすくなります。
その先として、さらなる強化と考えると個別の単関節に対する筋トレの実施も考えていいのですけど・・・取り組む順番を間違えている人が多いと思いますよ。

よほど痛みが強い時期、関節の変形速度が速いという状態でないなら、日常生活の動作を抑制することはありません。動きを止めると股関節周囲筋を使う頻度は低下し筋力・持久力は低下、可動域も低下、股関節の動きのスムーズさも低下、結局は股関節周囲筋の状態としては廃用症候群へと進んでいくのですね。安静にして痛みの軽減が図れたとしても、次に動く時には歩ける距離やスピードが低下し、持久力などの低下により翌日の筋肉痛が出やすいなどの変化として表れるでしょう。

股関節への負担を減らすという大義名分で、意味の無い日常動作の抑制を行うと自分で自分の股関節を悪くしているということになりますからね。よく考えてくださいね。

(5)臼蓋形成不全とQOL

臼蓋形成不全の方は多くが将来的に変形性股関節症に進み股関節の手術をしないといけなくなるかも知れない?という不安、痛みが強くなって歩けなくなるかも?仕事が出来なくなるかも?という不安を抱かれています。
股関節への負担を減らすことが大切ですよという説明も受けるので、不安・恐怖が強い方は過剰に日常生活における活動を抑制し(安静にして過ごすことが重要と思い込む)てしまい、自分から廃用症候群やうつ状態を作り出していく人がいらっしゃいます。
臼蓋形成不全の方で診断を受けた方で無いとショックや不安は分かりませんし、私もその気持ちは経験が無いので共感がなかなか難しいです。
QOLというのはリハビリの学校では最初に講義で習うのですが、最近はQOLというのが本質として全てなのだと考えられるようになってきましたね。
QOLは生活の質(生活の豊かさ)という訳し方をされるのですが、患者様自身の生活の質を向上させるために理学療法士はリハビリをお手伝いする仕事だと思います。

生活の質?

そうですね、障害を持っていても個人の思考により前向きに生きることも出来るし、後ろ向きに生きることもできるということです。
臼蓋形成不全で股関節の変形があるから、今後変形が進み歩けなくなるかもしれない?仕事も出来なくなるかもしれない?そう悩んでばかりいると、患者様自身の視点は常にマイナス思考であり、患者様は幸せでもなく生活の質(生活の心の豊かさ)は無いですよね。
人の一生の時間は長くても100年程度です。30歳台で臼蓋形成不全と診断を受けても、先の人生を考えると何十年もありますね。マイナス思考で生きていくには長すぎますよね?
いつ必用になるか予測できない股関節の手術のために、皆さんが今の貴重な時間を大切に生きられないというのは非常に悲しいことです。
時間は取り戻せませんから。

理学療法で股関節の変形を治すことはできません。
痛みを完全に消し去ることも出来ません。

しかし、患者様自身が努力されていくのをリハビリの専門家としてサポートすることは出来ます。あくまでも舞台の主役が患者様であり、理学療法士は黒子なのですね。
依存的な思考の方は舞台の主役を治療者(医師・理学療法士・民間療法関係者)、黒子を患者と考えています。これは大きな間違いです。

30歳台で診断を受ける臼蓋形成不全の方は、急激な股関節変形の進行が無い方が圧倒的に多いです。だから生活の中で不安から過剰に守りに入らないでください。
もったいないですよ!
股関節への負担がかからない様に安静に過ごし、毎日できるだけ何もしない?
そういう行動を行ってしまう背景にはやはり漠然とした間違ったイメージと不安が存在していますね。その不安を解消していくために患者様自身が学習しなくてはいけませんし、理学療法士は皆さんと話し合いながら個々に合ったリハビリを展開していくのです。
患者様自身の努力があってこその気づきにつながり、結果として前に進める視点になれると思います。

(1)何十年先になるか分からない股関節の手術を恐れて何もしない生活を送った結果として、将来手術が必要になるかもしれない?
(2)適切なリハビリの取り組みを続けていき、出来ることはどんどん活動した結果として、何十年後かに手術が必要になるかもしれない?

皆さんはどちらを選択されますか?私は(2)をお勧めしますが・・・・
よく考えてくださいね。

Aさんには上記の大きく分けて5つの内容の話しをしながら、疼元庠舎での体作りを継続しました。
これだけの長文を読んでいただくと何が大切か少しは私が言いたいことは伝わったかもしれませんね。伝わっていれば嬉しいでのすが・・・・

Aさんは「股関節はどうしたら痛みが治りますか?動きが良くなりますか?」という質問を始めはされていました。
しだいに、「こういう運動をすると翌日などは調子がいいようです」「だいぶ疲れてくると股関節が硬くなるので運動では筋肉が緩まないので来ました」など自分が主体の発言が聞かれる様になりました。
最初の2ヶ月は月に2回、最近は1〜2ヵ月に1回のペースで疼元庠舎をご利用いただいています。
疼元庠舎は徒手技術も使いますが、それは股関節の調整をするための一つとして当たり前の技術ですが、それが重要でもありません。あくまでも補助的役割でしかないですね。
ある程度の動きやすい状態を作った先の取り組みを如何に組み立てるかが重要なのですね。

臼蓋形成不全で診断を受けたばかりの人や痛みが数ヶ月持続している人は病院以外に鍼やカイロ・整体・マッサージなどを併用したり、ドクターショッピング状態になっている人まで様々です。
臼蓋形成不全でのリハビリとして大切で効果のあるものは何か?と考えると、間違いなく皆さんの日々の取り組みです。
理学療法は保険が利きますので、利用できる期間は毎日利用して構いませんが、私の臨床経験では基本的には週に2回でも多いかなと思うほどです。患者様自身の普段の取り組みや症状についての学習と不安軽減への努力がないと、リハビリに週に何回も通っても何の意味(痛みの軽減が進み難い)もありません。
ましてや、民間療法に週に何度も通われているならお金を捨てているのと同じですね。

もう一度言います。日常生活内の動作修正(代償動作を抑制し弱い部分を使う動き)を行って、普段から行う動きをよい動きに変化させて継続していくことが一番のリハビリ(股関節に対してのトレーニング)です。

Aさんに特別な事をしたわけではありません。Aさんに合った運動量で継続的な取り組みを行っていただいただけです。
Aさんが「誰かがこの痛みを治してくれる」「上手な先生に当たれば痛みが治るかもしれない?」という様な依存的思考から抜け出せて楽な方に逃げないで努力された結果、Aさん自身が痛みを軽減させ、歩行などの動きを改善させられたのですね。

現在はエアロビも再開されていますし、ジョギングも短い距離ですが股関節の痛みの状態を見ながら時々再開されています。

Aさん「今後レントゲン(定期的に進行を確かめるために撮影を行う)で変形が進んで痛みが強くなった時は止めるけど、運動しても急に股関節が壊れることもないし痛みが増すわけでもないので、運動は続けて行こうと思います」

ぜひ皆さんも出来ることから少しずつ取り組んで継続してみてください。


痛み緩和教室
疼元庠舎(とうげんしょうしゃ)

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