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坐骨神経痛

疾患別説明

坐骨神経痛の痛みと痺れ(太ももの痺れ・太ももの痛み)

【疾患】

坐骨神経は第4・5腰椎神経及び第1−3仙骨神経からの神経で構成され骨盤の閉鎖孔(梨状筋がある)から出て、大腿後面を通り下腿で2つに分かれて伸びています。

坐骨神経痛の診断は整形外科でも多く出ますが、この坐骨神経痛という疾患名は大腿後面から下腿後面に放散する痛みのある方に広い意味で使われていることが多いようです。 

大腿後面における純粋な坐骨神経障害というのは臨床でも滅多にないようです。(私は今のところ見たことがありません)

坐骨神経痛と診断はついていますが、腰椎神経の神経根障害などに伴う、大腿・下腿後面への放散痛としての症状が多いようです。

また、坐骨神経痛とよく似ている症状を出すもので梨状筋症候群があります。臀部から下肢に放散する痛みが存在し、臀部の深部に存在する梨状筋にスパズムがあり、これを圧迫すると痛みが出ます。マッサージなどで梨状筋をストレッチするとスパズム軽減に合わせて症状が軽減します。

【評価と経過】

高齢者で坐骨神経と診断を受けている人は多く存在します。下腿後面(ふとももの裏)から下腿後面(ふくらはぎ)に痛みや痺れがあります。腰椎ヘルニア・骨盤骨折・腰椎圧迫骨折など過去に腰部の問題があった人で、そのまま慢性疼痛に移行している人に多くみられます。

臀筋や下肢筋のスパズムが亢進していますので、このスパズムを軽減することが痛み軽減のためには優先されます。運動による下肢筋の伸張刺激に対する耐久性を上げることで、身体疲労に伴う痛みの出現頻度が減ると考えられます。筋力強化のための運動量が適正でないと神経障害部の炎症などを増強させたり、過度の筋疲労によるスパズムを亢進させ痛みを増強させてしまう恐れもあります。

臀筋や下肢筋の筋スパズムも少なく下肢に痛み・痺れのある方は、マッサージ・整体等では間違いなく対処できません。医療機関での薬剤や神経ブロックを中心とした痛みコントロールが必要でしょう。

【症例】Aさん 男性70歳 体型は普通

右のお尻から太ももの後ろにかけての痛みと痺れにより病院受診。坐骨神経痛の診断にて理学療法開始となる。

「3ヶ月前からお尻から太ももの裏にかけて痛みが出てきました。最初は整骨院や鍼などに通っていましたが痛みが治らないので病院に来ました。階段の昇り降りや床から立ち上がる時などに痛みが強いですね。長い距離を歩くと(10分程度の歩行)足の痛みが増すので歩けませんね〜痛み止めの薬も飲んでいますし、注射も腰やお尻に何本かしましたが痛みは変わりませんね?注射をした時はちょっとだけ痛みは楽な気もしますが・・・?」

病院受診し、坐骨神経痛という診断で局所麻酔の注射と牽引・ホットパック等で1ヵ月ほど経過し、痛み症状の軽減があまり見られないためPTによる運動療法が開始となりました。

上記の訴えに対して、私から知りたい基本的な内容に関する質問を合わせます。

  • 痛みの出た日から1〜2週間前の時期に普段と違うことを行いませんでしたか?
    (例:旅行・仕事の忙しい期間が続いた・転んだ・日曜大工・スポーツなどなど)
  • どんな質の痛みですか?
  • 以前に腰を痛めたことはありますか?
  • 何もしていない時の痛みはどうですか?

「痛みが出た1週間前くらいに家の中を片付けしました。タンスなんかを動かしたりしましたね。その時はどうもなかったですが・・・そう言えば、その後2〜3日してからジワジワ痛みが増して来ましたね。
普段感じているのは足が重だるい感じで、動く時にお尻から太ももの裏にピリッとするような痛みがあります。長く歩いているとふとももの裏あたりの突っ張りが強くなるような感じで痛みが増して歩けないですね。
椅子に座ったり、横になってTVを見ているときなどはそんなに痛みは感じません。寝返りの仕方では痛みが出ることがあります。夜眠っていると時々足がつることがありますね。
腰は30年ほど前にぎっくり腰をしたことがあります。その後は特に腰が強く痛む(ぎっくり腰のような強い痛み)ことはなかったのですが、仕事で疲れた時や重いものを持って運んだりすると一時的に痛みを感じることはありましたが、痛みが強くて動けないということは無かったです。」

最初のAさんのお話に合わせて最低限度欲しい情報を得ることができました。その他にも多くの情報を会話の中から拾っていくのは大切で、歩き方や起居動作などの動きなどと痛みの関連性を見ながら訴えの内容と合わせて考察していくことが重要です。
  Aさんの身体を動かし全身の評価をしていくと、腰部の筋硬化が強く体幹部の回旋動作(例:立位で腰を中心に身体を左右に捻る動作をイメージしてください)に制限が激しく、腰部の深部筋には筋硬結が存在しています。脊柱起立筋群はガチガチに硬い状態です。
  股関節の可動域も制限されていますが、股関節の最終可動域での骨性の抵抗感は無く、臀筋や腰部の筋の伸張制限により可動域が狭いという感じです。股関節を曲げると臀筋の伸張痛が誘発されました。
  臀筋及び右下肢の内側広筋・ハムストリングスにスパズムがありこの部位の軽い圧迫でも強い痛みが誘発されます。

Aさんの訴えと身体的な評価を合わせると、もともと腰の筋硬結と脊柱起立筋群のスパズムが影響し、腰椎から出る末梢神経の繋がるお尻やふとももの裏にある筋肉(ハムストリングスなど)に筋萎縮・短縮が発生していると予想されます。長期間に及ぶ軽い神経圧迫であっても筋の変性は進んでいたと考えられます。

Aさんが痛みを感じた時に急に激しく筋肉などを痛めたのではなく、痛みはあまり感じていなかったのですが、確実に脊柱起立筋群やお尻やハムストリングスの筋肉は筋硬化が進み柔軟性が低下してきていたのですから、家の片付けの際に普段は行わない動きや大きな負荷をお尻や足にかけていますので、お尻や足の筋か靭帯などに微細な損傷をおこし(慢性炎症)、スパズムを起こしていると考えられました。

一時的なスパズムの増強という要因で痛みがあれば注射による薬剤、鍼、マッサージ、整体で骨をキュッキュッ、どれでもすぐに安定的な痛み軽減反応は期待できます。

しかし、2〜3回の注射や徒手療法を受けても安定的な痛み軽減の無い人は、慢性痛に移行している可能性もあり、受身で治療を受けつづけていても痛みの軽減が難しいのが現状です。Aさんのように慢性痛に移行している方は、私の経験からは痛み軽減には自分の努力が重要なポイントになってくるようです。

Aさんのように一度腰を痛めたことがあっても、その後は長期間に渡り痛みは感じていなかったのですが腰部を中心に筋硬化が進行している人には、薬剤による一時的な疼痛抑制や徒手療法では効果が一時的なだけで・・・すぐに痛みが再発します。数日後にスパズムがまた亢進してくるのですね。

Aさんに最初にお話したことは・・・
「上記のような状態により痛みが誘発されていると考えられます。今後も注射や徒手療法を受け続けても痛みの軽減は望めないでしょう。それは今まで経験してきたAさんが一番感じられていることではないでしょうか?

痛みの出ているお尻やふとももの裏の筋肉が伸ばされることで痛みを出していますので、まずは伸ばされる刺激に強くなるために柔軟性を改善していくことが重要ですし、そのための努力はAさん自身の日常生活での取り組み方に関わっています。リハビリの本質は病院のリハビリ室での20分のリハビリが重要ではなく、Aさん自身の24時間の中での取り組みが一番のリハビリ効果を出します。私がAさんに行うリハビリは普段の取り組みに必要なヒントや楽な身体の使い方を学ぶためのリハビリでありAさんが行う身体作りをお手伝いする技術なのですよ。

Aさんの痛みを改善するのは理学療法ではなく、Aさんの取り組みが主役で痛みを軽減していくと思います。痛みを何かの治療法や薬で治してもらうという発想から痛みを自分が治すという発想に変えてみて、もちろんキツイことも多いのですが、少しの間だまされたと思って一緒に取り組んでみませんか?

痛みがある日突然消えてなくなるということはありませんが、Aさんが取り組んでいかれることで1ヶ月・2ヶ月・3ヶ月・・・と月日が進んで行き、リハを開始した最初や前の月の状態を振り返ると、「前より楽に歩けるようになったな?」「足がつるのが減ったな?」など少しずつ痛みが軽減してきていることが感じられると思います。そのような経過がAさんの症状と身体能力から判断すると、私の経験では予想されます。」

このようなやり取りがあってAさんとの理学療法が始まりました。初期の段階ではマッサージなどを使用して筋硬化の強い部位を弛緩させていきます。ストレッチはお尻の筋肉に問題があるのですが、動作においては身体全体の連動した柔らかい動きが重要であり、動きの容易さの獲得も痛み軽減のための重要な要素です。全身の問題点に目を向けて肩や足首など柔軟性の低下している部分もストレッチ等を実施していきました。

早い段階で運動を導入していきました。運動後に関節可動域の制限が増さない(例:運動後に運動前より楽に肩が動かせる)ような運動で適度な疲労感を伴うようにします。全身性に適度な疲労感を伴わせることで、筋の全身性の弛緩を誘発していきます。

運動初期の頃は「先生?運動した翌日に筋肉痛が出ましたが大丈夫でしょうか?先生に教えてもらった運動をしているとふとももの痛い筋肉がピリピリしますが痛みが出ないようにした方がいいのではないでしょうか?」などなど・・・

筋肉痛がなぜ起こるか、なぜ軽く痛みが出る範囲でストレッチ(動作を行うことでかかるストレッチ)や運動負荷をかけていくのかを繰り返し説明しました。

Aさんは痛みに伴い反射による筋収縮(スパズム)も起きやすい状態であり、ストレッチ等を実施していき、結果的に筋肉が伸びなくとも伸ばされる刺激への耐久性が向上すれば痛みの誘発は抑えられてきます。(注意:単純に本でみるようなストレッチを繰り返しても効果はありません)

運動初期は運動中や運動後に痛みの誘発があり、不安・恐怖が増すことも当然です。Aさんは不安もありますが、だまされているからね^-^と笑顔で言いながら運動を継続されました。

歩行は日常多く行う動作です。Aさんの場合はお尻とハムストリングスの痛みがあり、右下肢へあまり体重を乗せないような歩行(代償動作)でした。下肢のリラックスした状態で可能な範囲で右下肢へ体重を乗せる歩行動作の練習を繰り返し行っていきました。

基本的な自宅での取り組みとしては、動作を利用したストレッチの繰り返しとウォーキング(歩行動作が悪いと歩くことが筋硬化を増強することもあります)を実施してもらいました。

リハ開始1ヵ月〜2ヵ月くらいは動作時の痛み軽減という部分はあまり変化がみられませんでしたが、「最近足がつるのが減ったような感じで、前よりも夜は眠れるね〜」「だいぶ長く歩けるようになってきたよ」ということでした。

3ヵ月が経過してくると・・・

「前は身体をこんな感じで捻ったら痛くてたまらなかったけど?今は大丈夫やね^-^お尻の痛みもだいぶ落ち着いたし調子いいよ」

「身体を動かさなくてゴロゴロして過ごした時の方がかえって次の日とかが動くのにキツイ感じがするね。今はなるべく暇があれば歩いたり、身体を動かすようにしてる」

この時期になるとさらに身体状況の向上を目的に運動時の負荷量などを上げていき、動作の容易さに繋がる運動を導入していきます。(リハビリ室にある機器を使用した運動(単純な運動)ではありません)

私が担当し運動療法を開始してから5ヵ月後にはリハビリが終了となりました。Aさんの場合はかなり痛みの軽減が出来た方だと思います。日常の歩行などで痛み増強はほとんど無くなり5ヶ月目には自宅のエクササイズとして1時間ほどウォーキングをされているということでした。

坐骨神経痛は幅広くもちいられるので、この診断を受ける方は非常に多いと思います。坐骨神経痛の診断を受けて「お尻のここが痛くて、ここの痛みさえ治れば他はなんも問題がないけど」「薬も効かないし、治らない」と何年も同じことを言っている人はリハ現場でもよくおみかけしますね。

何年も何をしていたのでしょうか?病院や整骨院などたくさん体験し経験していても何もしていないのと同じです。

注射や徒手療法で持続的な痛み軽減効果が出る方(身体問題の軽い人)は、数回の注射や鍼を行ったりマッサージや整体を行うことで痛みが軽減し安定すると思いますが、Aさんのリハ開始前の頃のように「お尻のここが痛い〜治らない〜」と言っている人(慢性痛)は自分自身が受身の姿勢を変えきれないかぎり同じ訴えを続け、病院をコロコロ変え続けることでしょう。

自分が主役の健康作り、そのための行動を起こす、そのための行動を継続する・・・そう思えることは簡単なようで凄く大変なことなのですね。

【慢性痛対策】

診断が坐骨神経痛・梨状筋症候群のどちであっても臀部から下肢にかけて筋スパズムがあるのであれば、これらの筋を弛緩させれば痛み軽減につながります。

腰椎神経の圧迫や股関節周囲筋の筋硬結などが存在している人が多く、腰・股関節周囲筋の筋硬化軽減からアプローチしていくことが重要です。

大腿後面の筋肉と下腿三頭筋(ふくらはぎ)の筋スパズムがみられます。大腿後面の筋肉は特にスパズムの軽減に合わせて伸張刺激への耐久性を上げる運動を行うことが、安定的な痛み軽減には重要です。下腿三頭筋に痛み・痺れを感じる人は多いのですが、この下腿三頭筋は神経症状としての要因が強く、マッサージなどで筋弛緩を図っても一過性の痛み軽減(揉まれると気持ちいいだけ)にしかなりません。下腿三頭筋の痛み・痺れが強くてもこの部位の対処に多大な時間をかけることは無意味に近いと考えられます。

日常生活における安定的な痛み軽減が第一ですから、まずは腰・股関節の筋硬化改善に重点をおき、大腿後面の筋への伸張刺激に対する耐久性の向上を図りましょう。


痛み緩和教室
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