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筋筋膜痛症候群(肩こり・背部痛)

疾患別の説明

肩こり・背中の痛み・背部痛(筋肉のこり・筋肉の痛み・筋肉のこわばり)

【疾患】

一般にMRI・CTや血液検査において異常を認めないが、肩こりや腰痛として筋肉の痛みが2〜3ヶ月以上続く病態である。筋肉を圧迫するとトリガーポイント(筋硬結)があり圧迫痛を生じる。筋硬結は後頭骨・頚部から脊柱・骨盤に出来るため、首〜肩周囲筋(僧帽筋・肩甲挙筋・三角筋・菱形筋)と腰背部筋(最長筋・多裂筋・大臀筋・中臀筋)などに痛みを訴えることが多い。性別では3:1の比率で女性に多いとされている。症状としては日常生活での筋肉の疼痛と凝り・疲れやすい・体調不良などの自律神経失調症を伴うこともある。発生原因としては、筋への過剰負荷や筋疲労があり、脊柱の椎間孔狭小化による神経圧迫も原因となりうる。

精神的なストレスの増加や身体的疲労に伴い痛みの増強があり、痛みに伴う運動制限などもみられる。検査で異常のでない慢性痛としての一般的な肩こり・腰痛の大部分は筋筋膜痛症候群に含まれます。

【評価と経過】

筋筋膜痛症候群の方は「肩か腰」の一箇所に凝りや痛みを訴える方が多いです。症状の重い方は「肩と腰の両方が痛い」とか「背中が痛い」という訴えが多いですね。この疾患は検査(MRI・血液検査)では異常が出ませんが、痛みや凝りが強く慢性的に苦しんでいる人が多いのは事実です。

日常では午後から夜にかけて「肩や腰が重い感じがする」「体が疲れやすい」というような疲労性の訴えと合わせて、痛みを感じ始めると「持続的な鈍い痛み」を感じる人が多いようです。

症状の重い方では、痛みにより睡眠が取れない→眠れないから翌日などは痛みが増す→倦怠感・仕事への集中力低下(ボーとしている時間が増える)→持続的な痛みでイライラする→また今夜も痛みで眠れないという悪循環を経過する方が多いようです。

持続的な鈍い痛みであり、仕事中や夕方の家事(炊事など)では痛みにより動くことができないということはなく、本人が痛みを訴えても他者からは「そのくらい大した事は無い」という見方をされることは多いようです。このような慢性痛は他者の理解が得られにくい疾患であることも本人を苦しめる一要因になっているようです。

睡眠は身体的・精神的疲労を軽減されるため、睡眠により症状が軽減されるために朝は調子がいいという人が多く、平日の疲労の蓄積により「動くと疲れる・痛みが増す」ということから日曜などは寝て過ごすという人も多いようです。

この様に持続的な痛みや疲労・睡眠不足・他者(家族も含めて)からの理解が少ない方では、軽度のうつ症状が出てきています。個々により症状の差はありますが、問題筋のスパズムは持続していますので、全ての人に疲れやすい・痛みが出やすいという状況には変わりありません。

いろんなきっかけにより痛みが増強してきます。一般的な次の例で考えてみましょう。
症例A:もともと肩こりや腰痛があった人が職場で普段とは異なる、慣れない作業や長時間の作業などをした後に痛みが増してきて、1週間もすると痛みが増強し肩や手が挙がらないというような、運動制限(肩が挙がらない・腰が曲がらないなど)が激しく出て病院受診をした。

症例B:病院受診まではしなくても我慢できる痛みの範囲(一般的な軽い肩こり・腰痛)だが、仕事をしていると肩や腰の痛みが増し、パソコンをしていると頭痛や肩が痛くなる、痛い日は睡眠不足になる。

症例A・Bどちらも身体的な疲労と精神的な疲労の強い時に、筋肉内の筋硬結が基点となり痛みに伴う反射が亢進してくるため、筋スパズムが亢進し痛みが増強するという仕組みです。

症例Aさんのような一過性に痛みが増強(明らかな炎症を伴わない小さな筋線維損傷が考えられる)し運動制限が激しく出ている方は、反射が亢進しているためトリガー点への局所麻酔による痛み情報伝達の抑制を行うことで反射を抑制し筋スパズムの軽減を図る治療が病院ではされると思います。局所麻酔が上手く効果を出せば、2〜3日で痛みはかなり軽減すると思います。

症例Bさんは、激しい痛みまではありませんが筋硬結が基点となる反射の結果、筋硬結の存在する筋に筋スパズムがありこれを軽減していく必要があります。肩こりや腰痛などの慢性痛(病院受診までは必要ない程度)に苦しむ多くの方はBさんと同じです。

局所麻酔は必要なく、問題となる筋のスパズム軽減と柔軟性向上を図ることで、日常生活で感じる慢性痛を安定的に軽減できます。

アプローチとしては、問題となる筋肉内に存在する筋硬結へ適切な刺激を加え、筋硬結の形状を変化させ痛み情報伝達を抑制させます。筋スパズムが抑制されると痛みが軽減されますので、スパズム軽減に合わせて問題の筋への運動やストレッチによる伸張と収縮を行わせ(適切な負荷刺激)筋の耐久性(運動に対する)向上を図ることが必要です。

もちろんAさんも一過性に痛みが増強したものを局所麻酔で抑制できているというだけで、痛みは軽減しても治っているわけではなく身体状態はBさんと同じです。

AさんもBさんも日常生活における安定的な痛み軽減のためには、問題筋の改善を図らなければ年々筋肉の硬化が進行し運動制限は激しくなる一方でしょうね。

【慢性痛対策】

若い方で凝りや痛み症状が軽い人(月に2〜3日痛みを感じる日がある程度の人で筋硬化が少ない方)は、短時間のアプローチで一過性の筋スパズムを軽減すると、一時的な痛み軽減ができると思います。

痛い時だけの調整という方法でよいのですが、月に2〜3日肩こりを強く感じる時があるという程度の若い人(20歳代)でも、筋肉内の筋硬結→反射→スパズムが起きていますので、「前屈で床に手がつかない」「股関節の開脚が狭くなる」などの関節可動域制限が進む前の段階から、運動などによる自己管理は基本として継続して行くことが大切です。

慢性痛で筋硬化が進んでいる人は硬化した筋を改善していくためには筋線維への直接刺激が必要ですし、継続的な総合的アプローチ(筋硬化の改善と運動による耐久性強化)が必要となります。痛い時だけの対処では問題の悪化(1月内の痛みを感じる日の増加、次の痛みを感じる日までの間隔が狭くなる)をたどります。

問題部位の表層筋から深部筋へと順に弛緩させていき、問題である筋硬結を適切に刺激することが痛み情報抑制に繋がります。「ツボで押します」というようなマッサージは表層筋のみのアプローチとなりますので深部筋の弛緩効果は不可能です。ツボはあくまで癒しとして考えてください。

局所の慢性炎症状態により筋硬結への刺激量の調整が必要ですので、強く押されればいいというものではありません。「深部筋=強く押すと圧力が伝わる」という誤解のないようにお願いします。

運動や体操などにより肩・腰の筋肉や脊柱周囲筋への適切な負荷による収縮・弛緩を促通することで、全身の弛緩効果を出すことが可能です。肩こり腰痛の問題筋をエクササイズ(運動・体操)などにより適切に対処できれば、症状の軽い方は時々感じている凝りや痛みは自己管理で十分対処できるようになると思います。さぼっちゃだめですよ!

深部筋への適切なアプローチを行うことは大変時間を要します。表層の筋肉から徐々に安定させていき、筋肉への数回のアプローチによりようやく深部筋へ到達できるようになります。

慢性痛の症状がある方はぜひ早期より数ヶ月に1回程度(1回にしっかり時間をかける)のコンディション調整は継続していってもらいたいものです。

最後に慢性痛の強い症例Cさんをご紹介します。初めてリハビリに来られた時のCさんは病院・整体・鍼などの噂を聞いてはあちこちを回るドクターショッピングの状態でした。

あくまでも特別な症状ではなく、疼元庠舎を始めてから今までにご来店いただいたお客様によくみられる身体状態です。

【症例】(症例Cさん:30代後半)

肩の痛みにより外来受診をされ検査では明らかな異常は無いのですが、一応は肩関節周囲炎という診断で理学療法が開始となりました。

本人の訴えとしては「右肩の痛みがあり頭痛もする。肩を動かさない時でも(安静時)痛みが持続的に鈍い・重い感じがあるので夜間も眠れないし食欲も無い。倦怠感も強いので、日中はほとんど家の中で生活しています。動くと痛みや疲れが増すので外に出る気がしません。元気に動けないし家の事も体調によって出来ない日もあり家族に申し訳ないです。」という内容でした。

また、病院では「骨に異常はないですし大した事ないですよ、肩こりでしょうからしばらくすれば治ります」整体やカイロでは「背骨や骨盤が歪んでいるから矯正すれば治りますと言われて何度か通ったのですが何も変わりませんでした」というような、医療もしくは民間療法などに不信感を強く持たれていました。

初日は身体評価を中心にみていきました。Cさんは右肩の関節可動域は若干制限がありましたが、それが生活内の動作に影響をおよぼして普段感じている痛みを増強させているのではないようでした。実際に訴えからも安静時痛が問題で、動かしていないのに痛みが持続的に続いている原因が何かということがポイントになるという感じでした。本人は原因がはっきりしない痛みに対する不安感があり、「何で私がこんな痛みで苦しまなくてはいけないのか?」という感情も強くあったように記憶しています。

Cさんの右肩を触っていくと右肩甲骨の動きが若干悪いのと右肩甲骨にある棘下筋(この部位に大きな筋硬結があるのは珍しい)に筋硬結が存在していました。初日はこの筋硬結へ軽い刺激を入れ形状をある程度破壊すると痛みの軽減がみられました。筋硬結を圧迫している時は「あっ!その痛みはいつも感じている痛みに似ています」「そこが痛みの原因として関係していたのですね」と本人から言われました。終了後も痛み軽減がみられ、その日はいつもに比べると夜間睡眠がとれたということでした。

筋硬結へのアプローチだけでなく、やはり本人が痛みと関係している部位を認識できるということは非常に大切なことで、不安感の軽減も大きく影響して早期の痛み軽減に繋がったと考えられます。

「肩の悪い場所を押してもらうとすごく楽になります。最初は1〜2日後まで楽でしたがすぐに痛みが戻っていました。最近は押していただいた後はだいぶ持続的(1〜2週間)に痛み軽減が安定してきました。」

開始2週間後からは筋硬結へのアプローチと合わせて、肩甲骨周囲筋の伸張・収縮を促通しながら、痛み・疲労の増強しない運動やストレッチを継続していきました。痛い場所を揉んでもらうことは痛み軽減には有効ではあるのですが、それだけで終わっていると何も前へ進んでいないために、問題筋の耐久性も向上せずに普段の安定的な持続した痛み軽減には繋がらないようです。

筋硬結へ数回のアプローチと運動を合わせて継続(2〜3ヵ月)していくと、普段感じられる痛みが安定的に軽減できましたが、完全に痛みを押さえ込むことはできませんでした。

肩の棘下筋の状態も可能な範囲改善できたところで安定期間に入ったため、今後アプローチを短い間隔(1週間に2回)で続けても痛みは完全に消えることはないだろうと予測されました。  

Cさんはどのような身体的感覚があると痛みが増してくるかということを上手く学習されましたので、「今の痛みの状態では筋硬結へアプローチすることが痛み軽減には必要である」「今の痛みの強さでは、自分で運動やストレッチ等を行うことで痛みを抑制できる」というような自分の身体状態を自身で正確に判断でき、痛みをコントロールする意識と技術を身につけられました。

痛みが出て必要な時期を自分で判断し来院するように進め、実際に自分でコントロールしていただき、リハビリの回数はしだいに少なくても普段の痛みの増強はほとんどみられなくなりました。

痛みを完全に消すことはできませんが、Cさんの正しい認識と冷静な判断は普段の生活の変化をもたらすことができました。関節破壊なども伴わない一般的に肩こりなどと簡単に考えられている筋筋膜痛症候群でも、痛みというのは完全に感じないようにできない状態のものは多いです。

医療機関を必要とする方の痛みなどは完全にとれない疾患の方が多いという事実を踏まえて、いかに痛みをコントロールしていくかという考え方を大切にしていただきたいと思います。


痛み緩和教室
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