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痛み学

講義1(痛みをどう考えますか?)

■痛み学・講義1

痛みをどう考えますか? 痛みとはどういうこと?
注射は嫌い 必死で痛いのに気づきませんでした
痛みを伝える2つの神経 急性痛と慢性痛
痛みを知るということは ちょっと復習
それでは具体的な例で・・・ あなたは冷やす?温める?
捻挫や打撲した場所を軽く触っても痛い 炎症反応は無くなったけど、時々痛い?
痛いと筋肉が硬くなる? 最初は痛み止めの薬がよく効いたけど・・・
痛みという共通言語 痛みを見つめ直す
ぜひ、正しい知識を身につけましょう! 最後に

痛みをどう考えますか?

皆さんが普段から感じることの多い肩こり・腰痛・首の寝違え・捻挫・腹痛など数えてみれば様々に痛みは存在してますね。これらの痛みの起こる原理はまったく別物なのでしょうか?それとも同じ痛みなのでしょうか?また、捻挫や骨折、はたまた癌などの強い痛みの起こる原理は違うのでしょうか?

疑問が多いところですよね。多くの研究が行われていますが、まだまだ分からないことの方が多いというのが現状です。

皆さんの日常生活の中で感じる痛みを軽減していくためには、痛みについての正しい知識が重要であると考えられます。これから書かれていることが皆さんの痛みをコントロールするためのセルフケアの参考になれば幸いです。

痛みとはどういうこと?

「痛みとはなんだろう?」と考えると、周りに普段肩こりや腰痛を持っている人は沢山いるけど「痛みがなぜ起こるか?」を正確に教えてくれる人はいないと思います。不思議ですね?こんなに皆さんが困っている問題なのに痛みについての知識は一般の人には普及していないのはなぜだろう?そんな疑問からこのお話は始まります。まず、大まかに皆さんが痛みについてイメージできるよう書いてみたいと思います。痛みに関して勉強している学会があります。国際疼痛学会(こくさいとうつうがっかい)ていうのがあるのですが、この学会で痛みというのはこういうことですよと定義されています。「痛みとは実質的または潜在的な組織損傷を伴うか、あるいはそのような損傷に基づいて表現される不快な感覚、あるいは情動体験である」・・・・・なんのこっちゃ?

簡単に言うと!打撲や切り傷などの怪我(組織損傷)の程度だけで痛みの強弱を感じるのではなく、組織損傷以外にも痛みを感じる原因の一つとして怪我による不安や恐怖や苛立ちなどの精神面の影響もあるということが書かれています。

人が生まれてから成長していく中で、転んだり・けんかしたり・火傷したりといろんな痛い目に遭いますよね、この経験による記憶が痛みの情動の部分に大きく関係してくるのです。組織損傷により痛いと感じるのは「感覚」、つらいと感じるのは「情動」(不安や恐怖や苛立ち)であり、同じような怪我でも情動の影響で痛みを感じる強さは人によって違ってくるということですね。

あなたの肩こりや腰痛の痛みがある時を思い出してください。「イライラする」「なにもする気にならない」「眠れない」など情動面の影響が強くありませんでしたか?誰しも痛みがあると不愉快になるものです。

情動面が先行して痛みが増強して来る人は、ストレスの影響などが痛みを感じている原因として強いのかもしれませんね?

注射は嫌い

体育館や保健室に並んで注射をしていた昔を思い浮かべてください。インフルエンザの注射が選択できる現在では懐かしい光景ですね。小さい子供は注射をする時に泣きますが、大人で泣く人はほとんどいませんよね。子供も大人も針を刺すことで皮膚が痛みを感じます。この皮膚の感じる痛み感覚の強さは大人も子供もさほど違わないのですが、恐怖や不安という面の違いで子供は恐怖・不安が大きくて泣いちゃいます。

注射をされている子が泣き始めると、その後ろの子も泣き始めて次々にその泣き声で他の子供も泣いてしまう。まだ注射していないのにね^-^

顔を背けて針を刺す所を見ないと恐怖や不安を強く感じないから泣かない子も多いですよね。痛いというよりも怖いのでしょうね!また、刺した時に泣いちゃう子は恐怖・不安の影響で感じる痛みを増強させているかもしれませんね。

ちなみに、お医者さんが刺す場所をしばらく圧迫してから刺すのは、皮膚への圧迫刺激を利用して皮膚の感じる感覚を一時的に鈍くしているのです。この場合は皮膚感覚を利用して痛みを抑えているという原理です。注射があんまり痛くない^-^

お子さんが転んで軽い怪我をした時は、「痛くて痛くて」泣いていないので、「痛いの痛いの飛んでいけ〜」をしてあげてくださいね。お父さん・お母さんは愛情をもって不安感を減らしてあげてくださいね。

余談ですが、1歳以下の子供は痛みを伝える神経と感知する脳との情報伝達が確立していないため痛みを正確に捉えていないそうです。このため麻酔なしでも手術が可能だろうと考えられているようです。

必死で痛いのに気づきませんでした

急な大きな怪我などでは痛みをさほど感じていない場合もあります。よく骨折などの患者さんでも骨折した直後は痛みを強く感じるが、病院に運ばれてくる頃には明日からの仕事や家の事などがすごく心配で、痛みをさほど訴えなかったりあまり感じていない場合もあります。スポーツ選手が試合中に骨折していても試合を続けていたということも時々ニュースなどで聞かれますよね。

戦争映画でもすごい怪我をしながら戦い続けていたり、痛くて動けないだろうと想像するような怪我を負っても必死に走って逃げているシーンを見ますが、あらかた事実に基づいているんですよね。見た目の怪我の大きさに対して本人は痛みをさほど感じていないのです。これらの怪我と痛みの強さのアンバランスが、実際の戦場の兵士で多くみられたとい報告が痛みの研究の始まりの一つになっていることも事実なんです。

戦場で戦う兵士には痛みよりも生死が最優先ですから怪我をしていても戦ったり逃げたりすることに必死になりますよね。意識の集中が怪我の問題よりも別のものに優先的に向けられていると痛みを感じている暇がないのですね。

怪我しているのに痛くない?痛みって不思議ですよね!

皆さんの日常では仕事中や好きな授業では肩こりや腰痛を感じないか、感じるけど我慢できる範囲ですよね。逆に仕事が暇な時や嫌いな授業などではストレスで逆に痛みを感じやすい場合が多くみられます。

私なんかは学生の時は根っからの勉強嫌いでしたから、体育以外は授業中椅子に座っているとお尻や背中が痛くてたまりませんでした(笑)!あと昼食時はお尻や背中は全然痛くなかったですが(笑)。

家に帰り食事をしてボーとしてくる時間帯になると肩こりや痛み、おまけに痛みが続くことでイライラを強く感じてきませんか?何かに意識を集中する必要がなくなると体の痛みは感じやすくなってくるのですね。

ということは・・・!寝るまでに、趣味をしたり、好きなものを飲んだり(お酒の飲みすぎはダメ)、彼氏とイチャイチャしたり、ペットと遊んだり、楽しい事をするよう心がけることで痛みを感じる時間帯を減らすことができるんですね。これも立派な痛みをコントロールする一つの方法ですよね!

痛みを伝える2つの神経

痛みを分類すると・・・・?

  1. 侵害受容性疼痛 (しんがいじゅようせいとうつう)
  2. 神経因性疼痛 (しんけいいんせいとうつう)
  3. 心因性疼痛 (しんいんせいとうつう)

の3つに分けられます。

侵害受容性疼痛は痛みを起こすほどの組織損傷(怪我)が発生した場合に、これを感知するための受容器(侵害受容器:しんがいじゅようき)があるのですが、この受容器がかかわる痛みのことです。痛みを起こす組織損傷を感知し脳に痛みを伝える侵害受容線維(しんがいじゅようせんい:痛みを感知する神経のこと)は2種類あります。Aδ線維(Aデルタ)とC線維です。

Aδ線維は鋭い痛みを伝えます。捻挫した瞬間やぎっくり腰の瞬間に激しく走る痛みや火傷した瞬間に感じる強い痛みなどはAδ線維が痛みを脳へ伝えています。Aδ線維の伝える痛みの特徴は「ここが痛い場所」と本人がハッキリ場所を言えるのが特徴!

C線維は捻挫やぎっくり腰、火傷の最初に感じる瞬間的な激しい痛み(Aδ線維)の後に時間が経つにつれてじわじわと感じてくる痛みがあると思います。このじわじわと鈍く、痛みの範囲も広がっていくような痛みをC線維が伝えています。

慢性の肩こり、腰痛に置き換えてイメージしてください。ほとんどの人が肩・腰の痛みを「この場所のこれが痛いです(ピンポイント)」と表現する人は少ないと思います。「痛いのは肩のこの辺り?」などの表現ですよね。肩こりが慢性化しすぎている人では、痛みを通り越して「すごく重い」とか「ひどく凝る」という感覚になっている人も多いですね。

この痛みを伝える侵害受容器は体の筋肉・靭帯・臓器・骨膜・脳膜などに存在しています。皆さんに多い肩の痛みや腰の痛みは筋肉が関係しているため、肩こり・腰痛はこの侵害受容性疼痛に含まれるわけです。

普段から持続的に感じている肩・腰の痛みに強弱はあれども、捻挫・打撲のすぐ後に感じるような鋭い痛みではないですよね。・・・・ということは!皆さんの普段の慢性化している痛みはC線維が関わっているということが分かりますね。

急性痛と慢性痛

医療機関で怪我や病気をして間もない期間に感じる痛みを急性痛といい、治癒(ちゆ:治るという意味)すると考えられる期間を過ぎても持続する痛みを慢性痛と言います。長い期間リハビリや整骨院やマッサージに通っている高齢者も、普段より肩や腰に痛みや違和感を感じている若いあなたも、皆さん慢性痛仲間ということです。

急性痛は怪我をした時に安静を保たないとさらに組織損傷を引き起こす(怪我が酷くなる)ために「動くな!」と危険信号を脳へ送っているものであり、体を守るための大切な感覚です。

これに対し、慢性痛は組織損傷がさほど強くない状態や改善していてもおかしくない時期になっても痛みが続いている状態です。

急性痛は無くてはならない大切な痛みで、慢性痛はあなたを苦しめるだけのもので、本来の役目である危険を知らせるものではなくなり体に必要のない痛みといえます。

急性痛は原因がはっきりしており対処法も多く薬剤もよく効きます。慢性痛になると組織損傷以外の精神的原因(うつ症状)も大きくなり、単純に薬剤が効かないため医療現場では急性痛よりも慢性痛の治療に苦戦しているのが現状なのです。

急性・慢性という言葉が出てきました。肩や腰の痛みについても痛みの部位が急性期か慢性期なのかを正しく理解することは対処法を間違えないために大切なことですね。

足首の捻挫を例に考えてみましょう。捻挫をすると損傷した足首周囲が赤くなり腫れてきて痛いですよね、触ると熱をもっていると思います。この痛めた部分にみられる反応は炎症(えんしょう)といわれるもので、損傷した組織の修復作業が体の中で始まっているためにみられるものです。

この超〜急性期は安静が第一です。さらなる組織損傷を起こさないように気をつけることが大切です。また、急性期は炎症反応を起こしている物質が痛みを出す原因であるため、薬剤などによる鎮痛が主体となります。組織を修復しているこの時期に民間療法はあまりお勧めできません。

急性腰痛症(ぎっくり腰)や五十肩などで痛みのある部位に赤みや熱があり浮腫(むく)んでいるような場合はまず病院受診をお勧めします。

痛みを知るということは

痛みというのは客観的に点数化できないものです。他人がどの程度痛みで苦しんでいるかは本人の訴える痛みの強さ・苦悩(情動)・痛みに伴う行動(痛そうな表情や足を引きずりながら歩いたり、痛い場所を手で押さえるなどの行動)などから想像するしかないものです。血液検査やMRIのようにハッキリ数値化や画像化することが出来ないからやっかいです。

同じ怪我や病気でも自分が感じている痛みや苦しみの強さが他者も同じように感じているとは限らないことがご理解いただけるのではないでしょうか?

私は肩が凝ると「重〜い感じで、鈍〜い痛みで、肩の力が抜けきれない感じ」という人もいれば、「肩を触られると痛い!手も痺れてくる」などと感じる人もいます。肩こり一つにしても「肩こり」という共通の問題ではありますが感じている痛みは他者との違いは多いようですね。

自分の経験による痛みについての常識が当てはまらないということがわかりますね。

もう皆さんなら急性腰痛症(ぎっくり腰)で一時的に激しい痛みにより腰を曲げて歩いている人と、普通に歩いたり仕事が出来ていても長期間肩や腰の痛みや疲労感に苦しんでいる慢性痛の人を見て、どちらの人が苦しんでいる?と聞かれても、単純にぎっくり腰の人が苦しんでいるとは言えないですよね。

肩こり・腰痛などの慢性痛をなめたらあかん!命に別状はないけれど本人は本当に辛いものなのです。

その他のA神経因性疼痛は切断後や交通事故による神経の引き抜き損傷後などにみられる激しい痛みなどで、皆さんの肩こりなどとは違うものです。B心因性疼痛は心理面の問題が大きく影響して痛みを訴える方にみられる問題です。Bの軽い症状の例として、皆さん過度に緊張した時にお腹が痛くなったりしたことないですか?学生時代なんかに経験したことがある人多いと思いますが。それが強いと大変ですね。

痛みについての正しい知識を知ることはあなた自身も痛みをコントロールすることで今よりも楽になれますし、あなたの理解は他の慢性痛に苦しむ人達の支えにもなると思います。

ちょっと復習

肩こりか腰痛を考える時に必要なことがいくつか出てきましたが、急性痛・慢性痛に関わるAδ線維とC線維の復習と急性期にみられる炎症について考えてみましょう。

普段炎症という言葉をよく効きませんか?口内炎・肺炎・扁桃腺炎・関節炎(五十肩など)とか他にもドラマや友達から沢山耳にするはずです。誰でも体の組織が破壊されるとこの炎症による反応がかならずみられます。

炎症とは傷害性の刺激に対して起こる組織の反応をいい、炎症により起こる発赤(ほっせき)・発熱(はつねつ)・腫脹(しゅちょう)・疼痛(とうつう)・機能障害(きのうしょうがい:痛みにより怪我した部分を動かすのが困難な状態)を炎症の5徴候といいます。

炎症時にはこの5つがみられるということです!捻挫した足首の部分だけに炎症がみられる場合、風邪をひいた時に全身の免疫作用にともなう炎症として顔が赤くなり熱が出たり関節の痛みが出たりすることは誰もが経験されていますよね。

○○炎症というと何か悪い病気のイメージで痛みもあるために炎症は悪者のイメージありませんか?炎症は善か悪で言うならば正義のヒーローであり善なのです。困った時にはすぐに現れるウルトラマンみたいなものですよ。

炎症を起こす炎症物質は破壊された組織を修復したり、体外から入ってくるウイルスなどを破壊するために起こる反応であり、人間が生きていく上で体を守るためになくてはならないものなのです。しかし、炎症物質は組織を修復する役割ともう一つの役割として痛みを出す原因の物質でもあるのです。

炎症物質は二つの役目を担っているのです。

道路工事では路面を壊した後に新しいアスファルトで固めますよね、その時に乾いていない路面の上を走ると壊れるから、交通規制をして作り直した路面をしっかり乾くまで待ちます。私たちドライバーはしかたなく渋滞にはまる訳ですが。

炎症による修復も同じです。工事をしてる役目(新しい組織を作る)と修復が終わるまでの交通規制のおじさんと同じ役目(修復途中の組織を動かすと再度組織破壊が起こるために痛みにより動けないようにする)の両方を担っているのです。

一つは炎症による組織の修復。もう一つは痛みは壊れた体の修復が終わるまでその部分を使わないように規制する。二つの役割とも大切なものですね。

それでは具体的な例で・・・・・

多くの人が一度は経験したことのある捻挫を例に考えてみましょう。捻挫は足が地面に接地する時にバランスが悪いと、着地ミスで足関節が内反(足底が内側に向く)します。この時に足関節周囲の筋肉や靭帯などが急激に強く引き伸ばされます。この時「痛ー!」て叫んでしまう強い鋭い痛みが瞬間的に出ますよね、これがAδ線維が伝える痛みです。

数分もすれば足関節周囲は皮膚の赤み(発赤)がでて触れれば熱(発熱)をもっているはずです。どんどん腫れて(腫脹)鈍い痛み(C線維が伝へる)が増してきますよね。痛みと腫れで足首が動かしにくい(機能障害)状態になります。

そうです炎症5徴候の出現ですね。足関節が内反したことで引き伸ばされた靭帯・筋肉が局所的な損傷を生じたために炎症が出現したのです。

靭帯・筋肉の一部が損傷すると、その損傷部位を治すために、血管や細胞から損傷を治す役割の炎症物質が移動してきたり作られたりします。これらの炎症物質を速く、大量に損傷部位へ移動しやすくするために毛細血管が拡張(温度が上昇し発熱がみられます)して血管外への移動を容易にします。すると血管外の細胞間に体液が増えて腫れ(腫脹)てくるのです。

この急性期の炎症による痛みは、修復作業を行うために「体を動かすな!」という必要な危険信号である痛みです。痛みが強くても過度に恐れる必要(死ぬかも?など^‐^;)はないのです。

ということは、急性期の炎症物質は組織修復が終了するまで出ていますので、修復終了まで痛みが出て当然ですよね。炎症物質が痛みの元なのですから。この急性期の時期は炎症物質産生を抑える薬剤(抗炎症薬)が痛み軽減には一番の効果が期待されます。

あなたは冷やす?温める?

組織修復のための炎症が円滑に進められるためには熱が必要です。熱が無いと組織を作り治すたんぱく質の動きも弱くなり修復過程を阻害してしまいます。

捻挫した時にすぐに冷やすのは炎症物質の産生や動きを押さえ、組織破壊の広がりを最小に抑えることと、寒冷刺激で痛み感覚を麻痺させることを目的に医療やスポーツ分野で広く行われています。しかし、損傷した日から毎日冷やし続けている人いませんか?毎日冷やしていると修復を遅らせていることになりますよね?逆に体を壊しているのではないですか?

部活動の学生さんなどは、プロ野球の試合の後にピッチャーが肩を冷やしている場面をみて、誤解から練習後に毎日冷やし続けている子も多いようです。実際にプロのピッチャーでも試合後に冷やすと翌日の肩の調子が悪いという人もいて、冷やさない人もいるという現実をぜひ知っていただきたいですね。

何れにしても冷やすのは損傷したすぐ後の数分間程度で(組織の破壊される範囲を制限)、翌日などからは冷やさない方が理屈にあっています。ただ、痛みという感覚を冷刺激を利用して和らげるという目的で使うのは急性期の痛みが激しい時期での対処方としては悪くはないですね。

シップなんかも温・冷どちらがいいのかよく聞かれますが、温シップは唐辛子成分が塗ってあり皮膚が温かく感じるのみですし、決して張っている部分が冷えたり温かくなったりしている事実はありません。冷シップも皮膚が冷たく感じるだけなので正直気持ちいいと感じる方を張るのが一番というのが答えです。薬剤としての効果とリラックスの意味合いを合わせて使用することで、今までよりもっと良い効果が期待できるかもしれませんね^-^

ということは・・・・!肩こりや腰痛で、帰宅後から就寝までの時間帯につらく感じる人などは、この時間帯にシップを張るのがベストということですね。シップを張ることで気持ちよく感じリラックス出来ることは自律神経にも作用しますし、痛みを軽く感じれるということは情動面(イライラなど)への良い影響もあり、痛みをコントロールするための一つの方法として使えますね!病院で処方されるシップには鎮痛剤が塗り込んであるものもあるので、病院で処方されたシップは薬剤師さんに尋ねましょう。

話が逸れ過ぎましたね。腰痛などでリハビリや整体を行っている方で、一時的に痛みを抑えるために氷などで冷やして、痛みが軽減したら運動などの訓練を行っている人は正解ですが、冷やすだけ、温めるだけで終了している方は・・・・・・?よい病院は自分で選択しましょう。

 捻挫や打撲した場所を軽く触っても痛い!なぜ?

捻挫の時に足関節の周囲には炎症が起きています。この炎症により腫れて痛みが強い急性期は、痛み刺激とその他の刺激に対しても閾値(いきち)が低下しています。

閾値ていうのは「これ以下の強さの刺激では反応しないけど、この強さ以上の刺激があれば反応する」という感じるか感じないかの境界線のこと。簡単に言うと怪我した場所が敏感になるということ。

私たちが外部から感じる刺激は沢山あります。例えば椅子に座ると感じるお尻の圧迫刺激、肌が触れると感じる触覚刺激、熱い冷たいを判断する温・冷刺激など様々です。痛み刺激もこの中の一つなんですね。

捻挫した足関節周囲はいままで痛みとして感じることの無かった刺激の強さでも痛みとして捕らえるようになります。軽く触っても痛いですよね!この状態が閾値が低下しているということです。損傷した部分の閾値が低下して足関節に入るいろんな刺激に敏感になることは、いままで以上に注意深く警戒しないと、損傷している組織は弱い力が加わるだけでもすぐに2次的損傷(同じ場所を繰り返し怪我をする)を起こしてしまうからです。

この閾値低下も危険信号を脳へ送るために必要な反応であり、体の自然な防御反応と言えます。急性期はAδ線維とC線維両方とも必要な働きをしてくれています。歩くと鋭い痛みが出るのはAδ線維、ごろごろ横になって足を使っていない時(足関節に負荷がかかっていない状態)に鈍く痛むのはC線維。急性期は痛みは不快ですが、やはり大切なものでもありますね。

炎症反応は無くなったけど・・・・・?時々痛い?

捻挫してしばらくすると足関節も腫れが引き、歩いても痛みが出ないようになりました。病院でも「もう治った」とお医者さんに言われて1〜2週間経つのに、お風呂に入ったときやイライラする時などに足関節に違和感や鈍い痛みを感じる、家に帰ると足がだるく痛みが増す人などは慢性期の慢性痛によるものと考えられます。

 慢性痛を伝えるC線維は圧迫や触覚、温・冷刺激などの刺激も痛みとして伝える性質を持っています。慢性痛になっている人は急性期に比べ閾値の低下は改善されているが、怪我の前と比べると閾値はまだ低くC線維の活動が続いているということが予想されます。捻挫する以前は痛みとして感じない程度の刺激を痛みとして捉えつづけている状態です。C線維は働かなくていいのに働き続けているというありがた迷惑な状態ですね。^-^;

怪我(捻挫や骨折等)をした周辺部分の閾値に目を向けてみてください。怪我していない側の同じ部分と触り比べたらどうでしょう?怪我した側の皮膚や筋肉が痛みを感じやすくないですか?見た目は治っているのに・・・・><

痛いと筋肉が硬くなる?

痛みがあると筋肉は硬くなります。熱い物を触ってしまったときや、画鋲を踏んでしまった足は無意識の中で手や足の筋肉を縮めることで逃げる動作を行います。これは逃避反応と呼ばれるものです。行進で過度に緊張してロボットのような歩きになったり、お化け屋敷で恐怖に怯える時もすごく緊張し筋肉は硬く力が入っていますよね。基本的に痛みや恐怖など緊張する時は筋肉は縮んで硬くなるように出来ています。

怪我の大小に関係なく痛みを感じている期間は反射的に24時間常に筋肉は縮む方向に働いています。反射ですから無意識の中で行なわれている体の反応です。

例として、肩こりも同じ原理(筋肉内の微細な損傷が原因)で硬くなります。

20代で肩凝りのある方は肩周辺の筋肉の痛みが強いのですが柔軟性はありますよね。若い頃は強い肩凝りに悩んでいた人も、40〜50代になるといつのまにか肩の凝りや痛みは持続的な軽い痛みに変化してきていませんか?痛みは軽減してきた代わりに肩が上げにくいなどの関節の動きが悪くなっていませんか?

日常より慢性的な痛みにより筋肉が縮むように働いているため何年もかけて筋肉が硬くなり関節の動きが悪くなった結果ですね。多くの人は若い頃より痛みは軽減しますが、筋肉が硬く伸び縮みが悪くなり肩が上がらないようになる経過をたどるようです。周りの人から四十肩とか五十肩とかよく聞きますよね。

四十・五十になって肩が急に悪くなったと考えていると大間違いですよ^-^

筋肉の柔軟性の低下は関節の動きの悪さという形で長い年月をかけてハッキリしてくるものなのですね。ぜひ五十肩や変形性膝関節症と診断された人でも、明らかな炎症の無い人は筋肉の硬化改善に努力されることをお勧めします。

人間の体は交換出来ません。筋肉のメンテナンスを怠り、年を取ってから痛みが出てきて焦って運動を始めても、半端な努力では筋肉を再生させることは出来ません。

筋肉を鍛えて大きくすることは可能(年齢に関係なく高齢でも可能)ですが、柔軟性を改善することは非常に困難です。

ぜひ、10代から定期的に柔軟性を意識した内容のストレッチや必要なエクササイズは行っておきたいものですね。

最初は痛み止めの薬がよく効いたけど・・・

捻挫の話に戻しましょう。足関節の明らかに炎症が消失している慢性痛に対して痛み止めの薬(抗炎症薬)を飲んでも効きませんよね。周りの人に病院で薬をせがんで「ぜんぜん効かない」と怒っている人いませんか?効かないのが当たり前ですよね。

慢性痛の原因としてはC線維の活動が続いて損傷した周辺の筋肉が収縮し続けている場合と安静期間による不動(運動量の低下)の影響で足関節周辺の筋肉の柔軟性の低下と筋力・持久力の低下など、いくつかの原因が影響していると考えれれます。もちろん神経が明らかな傷害があれば話は別ですが。

改善するためには、足関節周囲筋の柔軟性の向上を行い、足関節の動きやすい状態ができれば、適切な方法での持久力・筋力を強化したいものです。しかし、トレーニングの方法を間違えると筋肉はさらに硬くなっていきます、くれぐれも素人判断のトレーニングは禁忌ですよ。

皆さん大切なことが見えてきましたよね!

炎症症状を伴う急性痛は薬剤が主役。慢性痛は筋肉の柔軟性とC線維の関わりが重要であり、薬に依存しても効かないのが当然なことが・・・。

慢性痛の場合は筋肉の柔軟性を向上させる方法として、リハビリ・整体・鍼・マッサージなどが効果があり、痛みを和らげる方法として利用するのはお勧めしますが、その先(日常生活での安定的な痛み軽減)の痛みの出にくい強い体を作っていくのは皆さん自身の運動による健康作りがもっとも大切です。

治してもらうという受身の発想ではなく、大切なのは自分が主役で健康作りを行なっていくという考えと行動であり能動的な考えではなくてはならないのです!

噂を聞いては違う病院巡りをしている人のことをドクターショッピング(買い物に行くように病院をころころ変える)と言います。

痛みを理解せずに痛みを完全に治したいと考える人ほど、噂を聞いてはいろんな病院や整骨院などに通っている人(ドクターショッピング)が多いようです。もちろんどこへ行っても「ちっとも治らん」と怒っている人が多いようですが。

人の噂(あそこの病院はいいよ)に一生懸命耳を傾けるではなく、痛みについて正しい知識を学ぶことが最も大切なのですね。病院や整骨院をいくつも通ったから自分は詳しいと思っているのなら間違いです。

痛みは、感じている本人にしか分からない痛み感覚と他者からの冷静な評価があって痛みを軽減するための必要な情報がそろうのです。ドラマで見るような「自分の体は自分が一番よく分かる」というのは嘘ですよ。

アメリカでは慢性疼痛の治療ではリハビリと臨床心理士によるカウンセリング、患者様への痛み教育が重要視されています。痛みに対し神経ブロックを何本も無駄に注射するだけの治療、薬を大量に出す治療の時代が終わっているのも事実のようです。

痛みという共通言語

痛いってどんな感じ?私のイメージする痛みとあなたの痛みは同じかな?

「痛い」とだけ言われても痛みを感じている人の痛みを「こんな痛みだ!」とハッキリ想像できないのではないですか?前にも話しましたが痛みは経験による情動が影響しますし、本人が感じたことの無い痛みは想像でしか判断できないでしょう。

肩こり・腰痛がない人は肩こり腰痛が分からないでしょうし、腰痛のある人を数人集めてもそれぞれ痛みの感じは違うでしょうね。

虫歯の無い人は歯医者さんで虫歯を削られる時の「キュイーン」という音の恐怖と痛みは分からないでしょう(笑)。恐ろしい><;

脳神経外科の本などにはクモ膜下出血の症状として「今までに経験したことの無い激しい頭痛が出現する」とあります。想像できませんが、さぞその頭痛は凄かろうと・・・・・!想像しますが、私は経験したことがないのでやはり分かりません?

もし皆さんが痛くて困っている人にどんな痛みですか?と尋ねるならもっといろんな事を聞きたくなるはずです!

その痛みが「いつ始まったか?」「どの部分が痛いのか?」「炎症があるか?」「どのような痛みの感覚か?」「痛みの強さは?」「痛みを感じたのは今回が初めてか?」などなど・・・!似たようなことを受診した時にお医者さんに聞かれませんか?

痛みを伝えるために「痛い」と言うのは非常に簡単に他者に痛みの有無を伝える方法ですが、「痛い」だけでは正確には伝わらないでしょうね。「痛い」はみんなの想像しやすい共通言語ではありますが具体性の少ない非常にあいまいなものなのですね。

ぜひ友達や家族の人と痛み(腰痛や頭痛など)について話す時、お医者さんに自分の痛みを伝える時などは「痛い」と言うだけではない表現をしてみてくださいね。

痛みを見つめ直す

痛みについて、急性痛・慢性痛を中心にお話をさせていただきました。急性期は痛み軽減に対して薬剤が主役となり、慢性期は自分で行う運動が大きな役割を果たすことなど、なんとなくでもご理解いただけたなら幸いです。

肩こり・腰痛・膝の痛みなど人それぞれに痛みの場所や痛みの質も様々です。肩こりや痛みを感じたら、「悪くなっていかないように早めに対処しないとな〜」と考えて、時々運動などをしていただければ先々だいぶん違うと思いますよ。

疲れた時に感じる「肩こり」を簡単に捕らえていると、年を取った時に苦労しそうですよね?肩こりは筋肉が硬化しているという最初の合図ですから何もしないでおくと間違いなく肩が挙がらなくなってきます。間違っても対処法はシップをペタペタと貼ることではないですよ。

肩こりを感じ始めたら早めに体の調整(ストレッチ・エクササイズ等)を行っていくことが大切であり、整体などに通い詰める(受身的)ことではありません。あくまでも自分が主役(主体的)の健康作り(セルフケア)を実践されることが大切なんです。

皆さんが痛みについての正しい知識を身につけることが大切で、正しい知識は自分の体を正しく評価できる力を与えてくれます。痛みの正体が分からない不安は心配することのない痛みを過剰に恐れてしまう恐怖となり、痛みを増強させてしまう原因の一つとなります。

ぜひ、正しい知識を身につけましょう!

長引く腰痛などは特に内臓疾患の関連痛として現れている場合も多く、「腰痛=腰に痛みの問題がある」という決め付けをせずに、まずは医療機関で整形・内科の診断を受けて、生命に関わる異常がないことを確かめられることを疼元庠舎はお勧めいたします。

痛みが出た時や痛みが続く時は「何か思い当たる原因があるか?ないか?」「炎症の5徴候はあるか?」「仕事・家庭・友達関係などで精神的なストレスが溜まってないか?」「体が疲れて肉体的なストレスが溜まってないか?」「運動不足で筋力・持久力が低下していないか?」「痛みのある関節の動きが硬くないか?」などなど・・・・

思いあたるものがあれば、自分で対処できることもあると思います。意外とあなた自身の対処法が痛み軽減に結果を出すことも多いと思いますよ。

皆さん自身でも出来るだけ冷静に痛みの原因を探っていくことで、適切な対処法を選択できると思います。ぜひ、痛みが出た時は痛みを見つめ直してみてください。

最後に

痛み学基礎編では基礎知識として大切な一部分に触れました。出来るだけ解りやすい内容にするため、表現を簡単にしており説明不足も多いと思われます。ご来店時に少しずつお客様と痛みについてのお話ができればと思います。多くの皆さんが不快に感じる痛みに対し、上記内容がお役に立てれば幸いです。


痛み緩和教室
疼元庠舎(とうげんしょうしゃ)

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